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専任の宅地建物取引士とは?必要人数・副業・兼任の判断ポイント

はじめに

宅建業免許を取得するためには、事務所ごとに一定数以上の「専任の宅地建物取引士」を設置する必要があります。

ただし、宅建士の資格を持っている人が会社に一人いればよい、というわけではありません。

宅建業免許の申請では、

  • その人が事務所に常勤しているか
  • 主としてその事務所の宅建業務に従事しているか
  • 他社の仕事や副業との関係に問題がないか
  • 従事者数に応じた必要人数を満たしているか

などが確認されます。

この記事では、専任の宅地建物取引士の必要人数、常勤性・専従性、代表者との兼任、副業やテレワーク、退職時の手続きについて解説します。


1.専任の宅地建物取引士とは

宅地建物取引士とは、宅地建物取引士資格試験に合格したうえで資格登録を受け、有効な宅地建物取引士証の交付を受けている人をいいます。

このうち、宅建業を営む事務所に常勤し、原則としてその事務所の宅建業務に専ら従事する人が「専任の宅地建物取引士」です。

宅建業者には、事務所ごとに一定数以上の専任宅建士を置くことが義務付けられています。

専任宅建士の設置は、重要事項説明などの業務を適切に行える体制を整え、宅地建物の取引の安全を確保するための制度です。


2.宅建士と専任宅建士の違い

宅建士の資格を持っている人が、すべて専任宅建士として認められるわけではありません。

宅建士として登録され、宅建士証を持っていても、

  • 別の会社で常勤している
  • 他の事務所の専任宅建士になっている
  • 通常の営業時間中に他の仕事へ継続的に従事している
  • 事務所へ通常通勤できない場所に居住している
  • 実際にはその事務所で勤務していない

といった場合には、専任性が認められない可能性があります。

つまり、

宅建士としての資格があること

と、

特定の事務所の専任宅建士として配置できること

は、別の問題です。

肩書や雇用契約書だけではなく、実際の勤務時間、勤務場所、業務内容などから判断されます。


3.専任宅建士は何人必要?

専任宅建士は、原則として、事務所ごとに宅建業に従事する者5人につき1人以上必要です。

宅建業に従事する者の人数 必要な専任宅建士数
1~5人 1人以上
6~10人 2人以上
11~15人 3人以上
16~20人 4人以上

例えば、宅建業に従事する人が6人いる場合には、専任宅建士が2人以上必要です。

なお、専任宅建士本人も「宅建業に従事する者」の人数に含めて計算します。

事務所ごとに配置する必要があります

専任宅建士は、会社全体の人数ではなく、事務所ごとに必要人数を計算します。

例えば、

  • 本店の従事者が5人
  • 支店の従事者が3人

という場合には、本店と支店のそれぞれに専任宅建士が1人以上必要です。

本店の専任宅建士が、支店の専任宅建士を兼ねることは原則としてできません。


4.「常勤性」と「専従性」が重要です

専任宅建士として認められるためには、一般的に「常勤性」と「専従性」が必要です。

常勤性

常勤性とは、その事務所の通常の勤務時間に継続して勤務していることをいいます。

勤務日数や勤務時間が極端に少ない場合や、事務所から遠く離れた場所に居住し、通常の通勤が困難な場合には、常勤性について確認を求められる可能性があります。

専従性

専従性とは、原則として、その事務所の宅建業務に専ら従事していることをいいます。

通常の勤務時間中に他社の仕事へ継続的に従事している場合などは、専従性が認められない可能性があります。

常勤性・専従性は、形式的な肩書だけではなく、勤務の実態に基づいて判断されます。


5.会社の代表者も専任宅建士になれる?

会社の代表者であっても、専任宅建士になることは可能です。

例えば、代表取締役自身が宅建士であり、

  • その事務所に常勤している
  • 通常の勤務時間中はその事務所で勤務している
  • 主としてその事務所の宅建業務に従事している

といった要件を満たしていれば、代表者を専任宅建士として配置できる場合があります。

一方、代表者が別会社の業務にも継続的に従事している場合や、複数の事業所を行き来していて勤務実態が明確でない場合には、専任性について慎重な確認が必要です。

また、東京都の免許申請では、申請会社の監査役と、その会社の専任宅建士を兼ねることは認められないとされています。

役員だから一律に認められる、または一律に認められないということではなく、役職と実際の勤務状況を確認することが重要です。


6.専任宅建士は副業できる?

専任宅建士の副業については、申請先の行政庁の運用と、実際の勤務状況を確認する必要があります。

東京都では、2024年11月から、次の要件を満たす専任宅建士について、宅建業者の通常の勤務時間外に行う副業を原則として認める運用が示されています。

  • 通常の勤務時間中は宅建業の事務所に常勤していること
  • その事務所の宅建業務に専ら従事していること
  • 副業が宅建業務に支障を及ぼさないこと
  • 他の法令に違反しないこと

例えば、宅建業者での勤務時間外に個人の行政書士事務所で業務を行う場合などは、勤務実態や提出書類を確認したうえで認められる可能性があります。

一方、次のような場合には、専任性が認められない可能性があります。

  • 通常の勤務時間が他の仕事と重なっている
  • 他の宅建業者で継続して勤務している
  • 副業によって事務所への勤務や宅建業務に支障が生じる
  • 他社の代表者として通常の営業時間中も業務に従事している
  • 実際の勤務時間や業務内容を説明できない

副業があるという理由だけで直ちに専任性が否定されるわけではありませんが、勤務時間や業務内容を客観的に説明できることが重要です。

なお、副業に関する運用は申請先によって異なる可能性があります。東京都以外で申請する場合には、申請先の行政庁へ事前に確認することをおすすめします。


7.テレワークをしていても専任宅建士になれる?

テレワークを行っているという理由だけで、直ちに専任性が否定されるわけではありません。

ただし、テレワーク中も事務所で勤務する場合と同じように業務を行える体制があり、勤務実態を客観的に確認できることが重要です。

例えば、

  • 事務所と常時連絡できる
  • 必要な書類やシステムを利用できる
  • 出勤状況や業務内容を記録している
  • メールや業務日報などで勤務実態を確認できる
  • 必要な場合には事務所へ通常通勤できる

といった体制が考えられます。

テレワークの実施によって、常勤性・専従性の基準そのものがなくなるわけではありません。

申請時には、勤務方法や管理体制について説明を求められる可能性があります。


8.専任宅建士が不足した場合はどうする?

従事者数が増えたり、専任宅建士が退職したりすると、法律上必要な人数を下回ることがあります。

例えば、従事者が5人から6人に増えた場合、必要な専任宅建士は1人から2人になります。

また、専任宅建士が退職し、必要人数を下回った場合には、新たな専任宅建士を確保しなければなりません。

必要人数を下回ったときは、宅建業法上、2週間以内に必要人数を満たすための措置を講じる必要があります。

これは、変更届の提出期限とは別のルールです。

  • 専任宅建士の不足:2週間以内に必要な措置を講じる
  • 宅建業者名簿の変更:原則として変更の日から30日以内に変更届を提出する

したがって、専任宅建士が退職した場合に、退任の変更届だけを提出すればよいとは限りません。

必要人数を下回る場合には、後任者の確保と変更手続きを並行して進める必要があります。

実務上は、退職後に慌てて後任者を探すのではなく、退職日までに新しい専任宅建士を確保しておくことが重要です。


9.専任宅建士の変更では2種類の手続きを確認

専任宅建士が就任・退任・交代した場合には、一般的に次の2種類の手続きを確認する必要があります。

宅建業者が行う変更届

宅建業者は、専任宅建士の変更について免許行政庁へ変更届を提出します。

宅建士本人が行う変更登録

宅建士本人についても、氏名、住所、本籍、勤務先などの登録事項に変更が生じた場合には、宅地建物取引士資格登録簿の変更登録が必要になることがあります。

会社側の変更届と、宅建士本人の変更登録は別の手続きです。

一方だけを行って手続きがすべて完了したと考えないよう注意しましょう。


10.申請時に確認される主な資料

専任宅建士として届け出る際には、申請先や案件により、次のような資料の提出・提示を求められることがあります。

  • 宅地建物取引士証の写し
  • 略歴書
  • 雇用関係を確認できる資料
  • 健康保険関係の資料
  • 勤務時間や勤務状況を確認できる資料
  • 副業の内容や勤務時間を説明する書類
  • 誓約書

東京都では、2024年5月25日以降、専任宅建士という立場だけを理由として「身分証明書」と「登記されていないことの証明書」を提出する必要はなくなりました。

ただし、その人が代表者、役員、監査役、政令で定める使用人などを兼ねている場合には、その立場に基づいて提出が必要になることがあります。

必要書類は申請先やその人の役職によって異なるため、最新の手引きを確認することが大切です。


11.申請前に確認したいチェックポイント

専任宅建士を配置するときは、次の点を確認しておきましょう。

  • 有効な宅地建物取引士証を持っているか
  • その事務所に通常勤務できるか
  • 他の事務所の専任宅建士になっていないか
  • 他社の勤務や副業との時間的な重複がないか
  • 代表者や他社役員を兼ねている場合に専任性を説明できるか
  • 事務所ごとの従事者数に応じた必要人数を満たしているか
  • 宅建士本人の資格登録内容が現在の状況と一致しているか
  • 退職や交代が予定されている場合に後任者を確保しているか

判断が難しい場合には、採用や役員就任、事務所開設などを正式に決定する前に、申請先または専門家へ確認することをおすすめします。


まとめ

専任の宅地建物取引士は、宅建業を営む事務所ごとに設置しなければならない重要な存在です。

主なポイントは、次のとおりです。

  • 事務所ごとに宅建業の従事者5人につき1人以上必要
  • 宅建士の資格があるだけでは専任宅建士になれるとは限らない
  • 常勤性と専従性が勤務実態に基づいて確認される
  • 代表者も要件を満たせば専任宅建士になれる
  • 勤務時間外の副業が認められる場合もある
  • テレワークでも常勤性・専従性と勤務管理が必要
  • 必要人数を下回った場合は2週間以内の対応が必要
  • 会社側の変更届と宅建士本人の変更登録は別の手続き

専任宅建士の判断は、役職名や雇用契約だけでなく、勤務時間、勤務場所、副業、他社役員との兼任などを含めて個別に判断されます。

行政書士なかじま法務事務所では、宅建業免許の新規申請・更新だけでなく、専任宅建士の就任・退任・交代に伴う変更手続きもサポートしております。

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