お役立ちコラム

医療法人設立後に必要な手続き

医療法人は設立して終わりではありません

医療法人の設立認可を受けて法人設立登記が完了すると、医療法人としての運営が始まります。

しかし、認可と登記が終われば、すぐにすべての手続きが完了するわけではありません。診療所を医療法人へ移行するためには、都道府県、保健所、地方厚生局などへの手続きも必要です。

さらに、医療法人には、毎年行う手続きと、役員・診療所・定款などに変更が生じたときに行う手続きがあります。

この記事では、医療法人設立後に必要となる主な手続きを、次の3つに分けて解説します。

  • 設立直後に必要な手続き
  • 毎年必要な手続き
  • 変更が生じたときに必要な手続き

なお、具体的な提出書類や期限、手続きの順序は、都道府県や個別の状況によって異なる場合があります。実際に手続きを行う際は、管轄行政庁の最新情報をご確認ください。


医療法人の設立直後に必要な手続き

1.医療法人の設立登記

医療法人は、都道府県知事から設立認可を受けただけでは成立しません。

認可書の交付を受けた後、法務局で医療法人の設立登記を行います。設立登記は司法書士の業務となるため、司法書士へ依頼するのが一般的です。

登記が完了した日が、医療法人の成立日となります。

2.設立登記完了届の提出

設立登記が完了した後は、登記事項証明書などを添えて、都道府県へ設立登記完了届を提出します。

「法務局で登記をしたので、都道府県への手続きも終わった」と誤解しやすいところですが、登記とは別に行政庁への届出が必要です。

3.医療法人による診療所開設の手続き

個人で運営していた診療所を医療法人へ移行する場合、原則として次のような手続きを行います。

  • 医療法人による診療所開設許可申請
  • 個人診療所の廃止届
  • 医療法人診療所の開設届
  • その他、保健所が求める関係書類の提出

個人診療所と医療法人診療所は、名称や所在地が同じでも、開設者が異なります。

そのため、個人診療所の開設者を、そのまま医療法人へ名義変更するだけではなく、個人診療所の廃止と医療法人診療所の開設という手続きが必要になります。

4.地方厚生局への手続き

保険診療を継続するためには、地方厚生局への手続きも必要です。

主な手続きには、次のようなものがあります。

  • 保険医療機関の指定に関する手続き
  • 遡及指定に関する手続き
  • 施設基準の届出
  • その他、保険診療に関する変更届

個人診療所から医療法人へ移行する際は、診療報酬の請求に空白期間が生じないよう、保健所と地方厚生局の手続きを連携して進めることが重要です。

5.税務・社会保険・契約関係の手続き

医療法人の成立後は、税務署、都道府県税事務所、市区町村、年金事務所などへの届出も必要になります。

また、必要に応じて次のような対応も行います。

  • 職員の雇用契約の切替え
  • 銀行口座の開設
  • 賃貸借契約の変更
  • 医療機器のリース契約の変更
  • 電気・通信など各種契約の名義変更
  • 取引先への法人化の連絡

行政手続きだけでなく、診療所の実務上の契約を医療法人へ引き継ぐことも忘れないようにしましょう。


医療法人が毎年行う手続き

1.事業報告書等の提出

医療法人は、原則として毎会計年度終了後3か月以内に、都道府県へ事業報告書等を提出します。

一般的な提出書類には、次のようなものがあります。

  • 事業報告書
  • 財産目録
  • 貸借対照表
  • 損益計算書
  • 関係事業者との取引に関する報告書
  • 監事の監査報告書
  • その他、法人の規模などに応じて必要となる書類

事業報告書等は、単に決算書を提出する手続きではありません。

決算後に必要な書類を作成し、監事による監査や理事会、社員総会など、法人内部の手続きを適切に行ったうえで提出する必要があります。

2.経営情報等報告

医療法人は、事業報告書等とは別に、医療法人の経営情報等を報告する必要があります。

この報告は、病院・診療所ごとの収益や費用など、医療法人の経営状況に関する情報を報告するものです。

原則として毎会計年度終了後3か月以内に提出しますが、外部監査の対象となる医療法人などについては、期限が異なる場合があります。

事業報告書等を提出しただけで、経営情報等報告も完了したことにはならないため注意が必要です。

3.資産総額の変更登記

医療法人は、決算内容に基づいて資産総額の変更登記が必要になる場合があります。

登記手続きは司法書士へ依頼するのが一般的ですが、登記後には都道府県への登記完了届も必要になります。

毎年の事業報告書等の提出とあわせて、登記の要否と期限を確認しておくことが大切です。


役員や診療所などに変更が生じたときの手続き

1.役員変更届

理事や監事に変更があった場合は、都道府県への役員変更届が必要です。

主な例は次のとおりです。

  • 理事の就任・退任
  • 監事の就任・退任
  • 理事長の変更
  • 役員の死亡や辞任
  • 任期満了後の重任

同じ人が引き続き役員を務める「重任」の場合でも、任期満了に伴う手続きと役員変更届が必要になります。

変更内容によっては、社員総会議事録、理事会議事録、就任承諾書、履歴書、印鑑証明書などの作成・提出が必要です。

2.理事長変更に伴う登記と届出

理事長を変更した場合は、都道府県への役員変更届だけでなく、法務局での変更登記も必要です。

登記完了後には、都道府県へ登記完了届を提出します。

さらに、診療所の管理者変更や保険医療機関に関する変更など、保健所・地方厚生局への届出が必要になる場合もあります。

一つの変更から複数の手続きが発生するため、届出先を整理して進めることが重要です。

3.定款変更認可申請

医療法人の定款に記載された内容を変更する場合は、原則として、事前に都道府県知事の認可が必要です。

認可が必要となる可能性が高い変更には、次のようなものがあります。

  • 診療所や病院の新設
  • 診療所や病院の廃止
  • 診療所や病院の移転
  • 医療法人の名称変更
  • 新たな附帯業務の開始
  • 定款に記載された事業内容の変更

一部の変更については認可ではなく届出で対応できる場合もありますが、変更内容や定款の記載によって取扱いが異なります。

認可が必要な変更について、先に移転や開設などを実行してしまうと、その後の手続きに支障が生じる可能性があります。計画段階で行政庁へ確認することが大切です。

4.診療科目や診療内容の変更

診療科目の追加・変更が、直ちに医療法人の定款変更を意味するとは限りません。

ただし、診療所の開設許可事項や届出内容、保険医療機関の施設基準などに関係する場合は、保健所や地方厚生局への手続きが必要になることがあります。

「定款変更は不要だから、行政手続きも必要ない」とは限らないため、変更内容ごとに確認しましょう。

5.所在地や診療所名称などの変更

主たる事務所の所在地、診療所の所在地、診療所名称などを変更する場合も、複数の手続きが必要になることがあります。

変更内容に応じて、次の手続きを確認します。

  • 定款変更認可申請または定款変更届
  • 法務局での変更登記
  • 都道府県への登記完了届
  • 保健所への変更届
  • 地方厚生局への変更届
  • 税務署や年金事務所などへの届出
  • 契約や銀行口座などの変更

主な手続きと期限の目安

手続き 期限・時期の目安
設立登記 認可書の交付後、法定期限内
設立登記完了届 登記完了後、速やかに
診療所開設許可申請 法人診療所を開設する前
事業報告書等 原則として会計年度終了後3か月以内
経営情報等報告 原則として会計年度終了後3か月以内
役員変更届 変更後、遅滞なく
変更登記 変更内容に応じた法定期限内
登記完了届 変更登記後、速やかに
定款変更認可申請 原則として変更を実行する前

※正確な提出期限や必要書類は、法人の所在地、規模、変更内容などによって異なる場合があります。


医療法人の手続きで注意したい5つのポイント

1.同じ役員の重任でも手続きを忘れない

役員が変わっていなくても、任期満了後に引き続き就任する場合は、社員総会などの機関決定と役員変更届が必要です。

2.事業報告書等と経営情報等報告を混同しない

両者は別の手続きです。一方だけを提出して、もう一方を提出し忘れないようにしましょう。

3.変更を実行する前に認可の要否を確認する

診療所の移転や追加などは、定款変更認可が必要になる場合があります。契約や工事を進める前に、行政庁へ確認することが重要です。

法人の組織・資産・事業承継などに関する非定型の変更で、通常の手引だけでは必要な手続きを判断できない場合は、複雑な行政手続の制度調査・検討サポートをご利用いただけます。

4.登記後の行政庁への届出も忘れない

法務局で変更登記を行った後は、都道府県への登記完了届が必要になることがあります。

5.過去の届出漏れを放置しない

事業報告書等や役員変更届などに未提出があると、将来の定款変更認可申請などを進める際に、先に未提出書類の提出を求められることがあります。

届出状況は定期的に確認しておきましょう。


よくあるご質問

役員が変わらなくても役員変更届は必要ですか?

任期満了後に同じ方が引き続き就任する重任の場合でも、必要な機関決定を行い、都道府県へ役員変更届を提出します。

事業報告書等を提出すれば、経営情報等報告は不要ですか?

いいえ。事業報告書等と経営情報等報告は別の手続きです。それぞれについて、期限と提出方法を確認する必要があります。

診療科目を追加する場合は定款変更が必要ですか?

必ずしも定款変更が必要とは限りません。ただし、保健所や地方厚生局への変更手続きが必要になる場合があります。定款の内容と具体的な変更計画を確認して判断します。

診療所を移転する場合は、移転後に届け出ればよいですか?

診療所の移転は、事前の定款変更認可や保健所の手続きが必要になる場合があります。移転先の契約や工事を進める前に、手続きの順序を確認することをおすすめします。


関連記事

医療法人設立について詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。


医療法人設立後の手続きもご相談ください

医療法人には、設立直後の手続きだけでなく、毎年の事業報告書等や経営情報等報告、役員変更、定款変更など、継続的な手続きがあります。

行政書士なかじま法務事務所では、医療業界で30年以上培った経験を活かし、東京都・千葉県・埼玉県・神奈川県を中心に、医療法人の設立と設立後の運営手続きをサポートしています。

主な対応業務は次のとおりです。

  • 事業報告書等の作成・提出
  • 役員変更届
  • 定款変更認可申請・届出
  • 登記完了届
  • 保健所・地方厚生局などへの手続きに関するご案内
  • 司法書士、税理士など関係専門家との連携

実際の対応範囲と報酬は、手続きの内容を確認したうえで、事前にお見積りいたします。

「どの届出が必要なのかわからない」「過去の手続きが正しく行われているか確認したい」という段階でも、お気軽にご相談ください。

医療法人設立サポートはこちら

お問い合わせはこちらからどうぞ

関連記事

ページ上部へ戻る