お役立ちコラム

医療法人設立に必要な書類とは?

はじめに

医療法人設立認可申請では、定款や事業計画書だけでなく、役員・社員、診療所物件、医療機器、預貯金、借入金、リース契約などに関する多数の書類を準備します。

しかし、すべての書類を院長先生が一から作成するわけではありません。

医療法人の設立書類は、大きく次の3つに分けられます。

  • 行政書士が設立内容を確認しながら作成・整理する書類
  • 院長先生や関係者に準備していただく資料
  • 不動産、借入金、リース契約等がある場合に追加される資料

この記事では、医療法人設立で一般的に必要となる書類と、準備する際の注意点を解説します。

なお、必要書類の様式、提出時期、原本・写しの取扱いなどは都道府県によって異なります。実際に申請する際は、主たる事務所の所在地を管轄する都道府県の最新の手引や募集要項を確認する必要があります。


医療法人設立の書類は誰が準備するのか

医療法人設立の書類は、一般的に次のように分担して準備します。

行政書士が作成・整理する主な書類

  • 医療法人設立認可申請書
  • 定款
  • 設立趣意書
  • 設立時社員総会議事録
  • 事業計画書
  • 予算書
  • 財産目録・財産目録明細書
  • 設立時の負債内訳書
  • リース物件一覧
  • 役員・社員等の名簿
  • その他、設立内容に応じて必要となる申請書類

これらの書類は、院長先生から提供された資料やヒアリング内容を基に作成します。

設立時社員総会議事録については、実際に決議した内容を記録する書類です。行政書士が内容や形式を整える場合でも、社員総会自体を開催し、必要な事項を適切に決議する必要があります。

院長先生や関係者に準備していただく主な資料

  • 医師・歯科医師免許証の写し
  • 役員・社員の印鑑登録証明書
  • 役員等の履歴書作成に必要な情報
  • 預金残高証明書
  • 診療所物件の賃貸借契約書
  • 土地・建物の登記事項証明書
  • 医療機器、什器備品等の契約書・請求書・領収書
  • 借入金に関する契約書や返済予定表
  • リース契約書
  • 個人診療所の確定申告書・決算関係資料
  • 診療報酬等の決定通知書
  • 診療所の平面図、周辺図等
  • その他、申請内容を確認するために必要な資料

すべての案件で上記の資料が必要になるわけではありません。拠出する財産、引き継ぐ負債、診療所物件の所有関係などによって必要書類が変わります。


医療法人設立で作成する主な申請書類

1.医療法人設立認可申請書

医療法人を設立するため、都道府県知事に提出する申請書です。

法人の名称、主たる事務所の所在地、開設する診療所、役員などの基本事項を記載し、定款その他の必要書類を添付します。

様式や提出方法は都道府県によって異なるため、申請時点の最新様式を使用する必要があります。


2.定款

定款は、医療法人の基本的な運営ルールを定める書類です。

主に次の事項を定めます。

  • 法人の名称
  • 目的
  • 主たる事務所の所在地
  • 開設する病院・診療所等の名称と所在地
  • 社員に関する事項
  • 社員総会に関する事項
  • 役員に関する事項
  • 資産・会計に関する事項
  • 定款変更や解散に関する事項

都道府県が公表している定款例を参考に作成しますが、単に名称や住所を当てはめればよいわけではありません。

診療所の数、役員定数、基金制度を採用するかなど、設立する法人の実情に合わせて内容を検討します。


3.設立時社員総会議事録

社団医療法人を設立する場合は、設立時社員総会を開催し、設立に必要な事項を決議します。

一般的には、次のような事項を決議します。

  • 医療法人を設立すること
  • 定款の承認
  • 社員の確認
  • 役員の選任
  • 拠出財産や基金に関する事項
  • 事業計画・予算の承認
  • 設立代表者の選任
  • その他、設立に必要な事項

議事録の内容は、定款、役員名簿、財産目録、事業計画書等と一致していなければなりません。


4.設立趣意書

設立趣意書は、医療法人を設立する目的や経緯を説明する書類です。

一般的には、次のような内容を記載します。

  • 現在の診療所の状況
  • 医療法人化を検討するに至った経緯
  • 医療法人として診療を継続する目的
  • 地域医療において果たす役割
  • 将来の運営方針

抽象的な理念だけではなく、現在の診療実績や将来の計画を踏まえて作成することが重要です。


5.事業計画書

事業計画書には、医療法人設立後の診療内容や運営計画を記載します。

都道府県の様式によって異なりますが、一般的には次のような事項を整理します。

  • 診療科目
  • 診療日・診療時間
  • 職員数
  • 診療見込み
  • 医療機器・設備
  • 設立後の運営方針
  • 将来の事業計画

現在の個人診療所の実績と比べて診療収入や患者数を大幅に増やす場合は、その根拠を説明できるようにしておく必要があります。


6.予算書

予算書は、医療法人設立後の収入と支出の見込みを示す書類です。

主な項目には、次のようなものがあります。

  • 診療収入
  • その他の収入
  • 人件費
  • 医薬品・診療材料費
  • 賃借料
  • リース料
  • 借入金返済額
  • その他の経費

予算書は、事業計画書、現在の診療実績、借入金の返済予定、リース契約等と整合している必要があります。

単に収支が黒字になるよう数字を当てはめるのではなく、実績や契約内容に基づいて作成します。


7.財産目録・財産目録明細書

財産目録は、医療法人の設立時に法人へ拠出する資産と、引き継ぐ負債を整理する書類です。

対象となる可能性がある財産には、次のようなものがあります。

  • 預貯金
  • 診療報酬等の未収入金
  • 土地・建物
  • 医療機器
  • 什器備品
  • その他、診療所の運営に必要な資産

負債には、借入金や未払金などが含まれる場合があります。

すべての個人資産や負債を当然に医療法人へ引き継ぐわけではありません。どの財産・負債を法人へ引き継ぐかを検討し、その内容を契約書、領収書、残高証明書等によって確認します。


8.基金・拠出財産に関する書類

基金制度を採用する場合は、基金の募集、引受け、割当て、拠出契約等に関する書類を作成します。

基金制度を採用しない社団医療法人の場合には、拠出申込書等が必要になることがあります。

基金や拠出財産の取扱いは、定款、設立時社員総会議事録、財産目録等にも関係するため、全体の整合性を確認しながら作成します。


9.役員・社員・管理者に関する書類

医療法人の理事、監事、社員および診療所の管理者について、一般的には次のような書類を準備します。

  • 役員就任承諾書
  • 管理者就任承諾書
  • 履歴書
  • 印鑑登録証明書
  • 医師・歯科医師免許証の写し
  • 役員・社員名簿
  • 欠格事由等に関する誓約書
  • その他、都道府県が指定する書類

ここでいう「社員」は、クリニックで勤務する従業員ではありません。

社団医療法人の社員は、社員総会で議決権を持ち、法人の重要事項を決定する構成員です。名義だけを借りるのではなく、社員としての役割を理解した方に就任してもらう必要があります。

また、役員数については医療法上の原則がありますが、例外的な取扱いもあるため、設立する法人の状況と管轄行政庁の運用を確認する必要があります。


案件によって追加される主な資料

医療法人設立では、診療所や財産の状況に応じて追加資料が必要になります。

診療所物件に関する資料

  • 土地・建物の登記事項証明書
  • 賃貸借契約書
  • 転貸借に関する契約書・所有者の承諾書
  • 診療所の平面図
  • 敷地図・周辺図
  • 役員等から賃借する場合の賃料根拠資料

個人名義の賃貸借契約を、そのまま医療法人名義へ自動的に変更できるとは限りません。

賃貸人の承諾、新たな契約、契約上の地位の承継等について、事前に確認する必要があります。

借入金に関する資料

  • 金銭消費貸借契約書
  • 借入金残高証明書
  • 返済予定表
  • 債務引継ぎに関する金融機関の承諾書
  • 借入金の使途を確認できる資料

個人の借入金を医療法人へ引き継ぐ場合は、金融機関の承諾が必要になることがあります。

医療機器等の取得に使われたことを、契約書、請求書、領収書等で確認できるようにしておくことも重要です。

リース契約に関する資料

  • リース契約書
  • リース物件一覧
  • 支払予定表
  • 契約承継に関するリース会社の承諾資料

リース契約も、法人化によって当然に名義変更されるわけではありません。契約先へ早めに確認する必要があります。

不動産を拠出する場合の資料

  • 土地・建物の登記事項証明書
  • 固定資産評価証明書
  • 不動産鑑定評価書
  • 現物拠出の価額に関する証明書
  • その他、行政庁が指定する資料

必要となる評価資料は、不動産の内容や都道府県の取扱いによって異なります。

不動産を拠出する場合は、認可申請だけでなく、所有権移転登記や税務上の取扱いも関係するため、司法書士や税理士との連携が必要です。


書類準備で特に注意したい5つのポイント

1.書類ごとの基準日・有効期間を確認する

財産目録や残高証明書などには、行政庁が指定する基準日や有効期間が設けられることがあります。

早く取得しすぎると、申請時に取り直しになる可能性があります。

2.最新の様式を使用する

様式や必要書類は、法改正や行政庁の運用変更によって更新されることがあります。

以前の申請で使用した様式や、インターネット上で入手した古い様式をそのまま使用しないよう注意が必要です。

3.書類同士の内容を一致させる

特に次の事項は、複数の書類に記載されます。

  • 法人名称
  • 診療所の名称・所在地
  • 社員・役員の氏名
  • 役員数・任期
  • 拠出財産
  • 借入金・リース契約
  • 事業計画・予算
  • 法人診療開始予定日

一つの内容を変更すると、複数の書類を修正しなければならない場合があります。

4.契約先の承諾を早めに確認する

賃貸借契約、借入金、リース契約等は、院長先生と医療法人が別の契約主体となります。

賃貸人、金融機関、リース会社等の承諾に時間がかかると、設立スケジュールに影響する可能性があります。

5.追加資料を求められる可能性を見込む

必要書類一覧に記載された資料を提出しても、申請内容を確認するために、行政庁から追加資料や説明を求められることがあります。

「一覧表にないから提出する必要はない」とは限りません。補正や追加照会へ対応できる余裕を持って準備を進めることが大切です。


都道府県によって様式や進め方が異なります

医療法人制度の基本的な仕組みは全国共通ですが、設立認可申請の受付時期、事前審査、面接、提出方法、必要部数、様式などは都道府県によって異なります。

例えば、東京都、千葉県、埼玉県、神奈川県でも、それぞれ独自の手引、様式、年間スケジュールが定められています。

また、同じ都道府県内でも、主たる事務所や医療施設の所在地によって所管行政庁が異なる場合があります。

設立を検討する際は、まず次の事項を確認しましょう。

  • 主たる事務所の所在地
  • 所管行政庁
  • 最新の設立認可申請スケジュール
  • 事前相談・説明会・予備審査等の有無
  • 最新の必要書類一覧と様式
  • 提出方法と提出部数

よくあるご質問

必要書類がすべて揃っていなくても相談できますか

はい。すべての資料が揃っていない段階でもご相談いただけます。

むしろ、残高証明書など取得時期に注意が必要な書類もあるため、最初からすべてを取得するのではなく、申請日程を確認してから順番に準備することをおすすめします。

個人診療所の賃貸借契約書はそのまま使えますか

契約内容と賃貸人の意向によって異なります。

医療法人への名義変更、新規契約、契約上の地位の承継などの方法が考えられますが、賃貸人の承諾が必要になることがあります。申請前に契約内容を確認します。

借入金やリース契約も医療法人へ引き継げますか

契約先の承諾や申請先行政庁の確認が必要です。

個人名義の債務や契約が、法人化によって当然に医療法人へ移るわけではありません。金融機関やリース会社へ早めに相談する必要があります。

印鑑登録証明書は早めに取得してもよいですか

証明書の有効期間や基準日は、都道府県や申請時期によって異なる場合があります。

取り直しを避けるため、管轄行政庁の最新の必要書類一覧を確認してから取得することをおすすめします。


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