お役立ちコラム
8.182026
法定相続情報一覧図とは?メリット・作り方・利用できる相続手続き

はじめに
相続手続きでは、亡くなられた方の出生から死亡までの戸籍や、相続人の戸籍など、多くの書類を準備することがあります。
さらに、銀行、不動産、証券会社など複数の相続手続きを行う場合には、それぞれの手続き先で同じ戸籍一式を提出することになり、書類の管理も大変です。
こうした相続手続きの負担を軽減するために設けられているのが、「法定相続情報証明制度」です。
この制度を利用すると、戸籍から確認した法定相続関係を「法定相続情報一覧図」として法務局へ提出し、登記官による確認を受けた一覧図の写しを交付してもらうことができます。
交付された一覧図の写しは、相続登記だけでなく、預貯金の払戻し、相続税申告、年金、自動車登録など、さまざまな相続手続きに利用できます。
この記事では、法定相続情報一覧図とはどのようなものなのか、取得するメリット、必要書類、作成から法務局への申出までの流れ、利用する際の注意点について解説します。
1.法定相続情報一覧図とは?
法定相続情報一覧図とは、亡くなられた方と法定相続人との関係を一覧にした図です。
例えば、父が亡くなり、
- 妻
- 長男
- 長女
が法定相続人であれば、被相続人である父と、配偶者・長男・長女との関係を図にして表します。
ただし、ご自身で家系図のようなものを作成しただけでは、法定相続情報一覧図として相続手続きに利用できるわけではありません。
法定相続情報証明制度では、戸籍・除籍謄本等と、戸籍の内容をもとに作成した法定相続情報一覧図を法務局へ提出します。
登記官が戸籍等と一覧図の内容を確認したうえで、認証文が付された「法定相続情報一覧図の写し」が交付されます。
簡単にいえば、
「大量の戸籍で確認した法定相続関係を、法務局が確認した一覧図で証明しやすくする制度」
と考えると分かりやすいでしょう。
2.なぜ法定相続情報一覧図を作るのか?
法定相続情報一覧図が特に役立つのは、相続手続きの提出先が複数ある場合です。
例えば、亡くなられた方に、
- 銀行口座が3行ある
- 不動産がある
- 証券口座がある
- 相続税申告も必要になる
というケースを考えてみましょう。
法定相続情報一覧図を利用しない場合、それぞれの手続き先で被相続人の出生から死亡までの戸籍などを提出し、法定相続人を確認してもらう必要があります。
一方、法定相続情報一覧図の写しを取得しておけば、利用できる手続きでは、戸籍一式に代えて一覧図の写しを提出することができます。
法務局では、相続登記のほか、預貯金の払戻し、相続税申告、年金、自動車登録などにも利用できると案内しています。
特に金融機関が複数ある場合には、それぞれの手続きを並行して進めやすくなります。
3.戸籍謄本・相続関係説明図との違い
相続では、
「戸籍謄本」
「相続関係説明図」
「法定相続情報一覧図」
という似たような書類が登場します。
それぞれの役割を整理すると、次のようになります。
| 書類 | 主な役割 |
|---|---|
| 戸籍・除籍謄本等 | 親子・婚姻などの身分関係を公的に証明する |
| 相続関係説明図 | 被相続人と相続人の関係を分かりやすく整理する |
| 法定相続情報一覧図の写し | 戸籍等に基づく法定相続関係を登記官が確認し、各種相続手続きに利用する |
相続関係説明図は、相続関係を分かりやすく整理するために作成する書類です。
一方、法定相続情報一覧図は、法定相続情報証明制度に基づき、登記官が戸籍等と照合したうえで認証するところに大きな違いがあります。
4.法定相続情報一覧図を作っても戸籍収集は必要です
ここは、特に誤解されやすいところです。
法定相続情報一覧図を取得すれば、
「亡くなった人の戸籍を集めなくてもよい」
というわけではありません。
むしろ、法定相続情報一覧図を作成するために、最初に必要な戸籍をきちんと収集する必要があります。
一般的には、
戸籍を収集する
↓
法定相続人を確認する
↓
法定相続情報一覧図を作成する
↓
法務局へ申出を行う
↓
認証された一覧図の写しを取得する
↓
銀行・相続登記などの相続手続きに利用する
という流れになります。
つまり、法定相続情報一覧図は、
「戸籍を集めなくてもよくなる制度」ではなく、「一度集めた戸籍一式を、その後の相続手続きで何度も提出する負担を減らす制度」
と理解するとよいでしょう。
戸籍の集め方については、「相続人調査・戸籍収集とは」の記事で詳しく解説しています。
5.法定相続情報一覧図を作るための主な必要書類
法定相続情報証明制度を利用するためには、法定相続人を確認できる書類をそろえる必要があります。
一般的には、
- 被相続人の出生から死亡までの戸籍・除籍謄本等
- 被相続人の住民票の除票など
- 相続人の戸籍謄本等
- 申出人の本人確認書類
- 作成した法定相続情報一覧図
などを準備します。
また、法定相続情報一覧図に相続人の住所を記載する場合には、住所を確認するための住民票等も必要になります。
必要となる戸籍の範囲は、相続関係によって異なります。
例えば、配偶者と子どもが相続人となる比較的単純なケースと、兄弟姉妹や甥・姪まで相続人となるケースでは、収集する戸籍の量も大きく異なります。
6.法定相続情報一覧図はどのように作る?
必要な戸籍がそろったら、その内容をもとに法定相続情報一覧図を作成します。
例えば、
被相続人
↓
配偶者
そして、
長男
長女
というように、被相続人と法定相続人との関係が分かるように記載します。
法務局では、
- 配偶者と子が相続人となる場合
- 子がいない場合
- 兄弟姉妹が相続人となる場合
など、さまざまな相続関係に応じた様式・記載例を公開しています。
なお、相続人の住所を一覧図へ記載するかどうかは任意です。
ただし、住所を記載しておくことで、相続登記など一定の手続きでは、各相続人の住所を証明する住民票等の提出を省略できる場合があります。
その後にどのような相続手続きを行うのかも考えて一覧図を作成するとよいでしょう。
7.法務局へ申出を行う
法定相続情報一覧図と必要書類を準備したら、法務局へ申出を行います。
登記官が、
- 提出された戸籍等
- 法定相続情報一覧図
の内容を確認します。
内容に問題がなければ、登記官の認証文が付された「法定相続情報一覧図の写し」が交付されます。
申出は、一定の管轄の法務局で行うことができ、郵送による手続きも可能です。
必ずしも、亡くなられた方の本籍地の法務局まで出向かなければならないわけではありません。
8.法定相続情報一覧図の取得費用は?
法定相続情報証明制度の利用自体は無料です。
法務局から交付される法定相続情報一覧図の写しについても、必要な範囲で複数通取得することができます。
例えば、
銀行A
銀行B
銀行C
相続登記
という4つの手続きがある場合には、複数の一覧図の写しを取得し、それぞれの手続きを並行して進めることもできます。
ただし、法務局での一覧図の交付が無料という意味です。
事前に取得する戸籍・除籍謄本等の発行手数料、郵送費などは別途必要です。
また、行政書士などの専門家へ戸籍収集や一覧図の作成・申出を依頼する場合には、専門家への報酬が別途必要になります。
9.法定相続情報一覧図はどのような手続きに使える?
現在、法定相続情報一覧図の写しは、さまざまな相続関連手続きに利用できます。
代表的なものとして、
- 不動産の相続登記
- 銀行・預貯金の相続手続き
- 相続税申告
- 年金関係の手続き
- 自動車登録に関する相続手続き
などがあります。
ただし、手続き先によっては、法定相続情報一覧図以外の書類も必要になります。
一覧図を提出すれば、
「相続手続きに必要な書類がすべて不要になる」
わけではありません。
例えば銀行であれば、遺産分割協議書や印鑑証明書、金融機関所定の相続届など、相続内容に応じた別の書類が必要になることがあります。
実際に利用する際には、提出先へ必要書類を確認することが大切です。
10.法定相続情報一覧図があれば遺産分割協議書はいらない?
法定相続情報一覧図と遺産分割協議書は、役割がまったく異なります。
法定相続情報一覧図が示しているのは、
「誰が法定相続人なのか」
ということです。
一方、遺産分割協議書は、
「相続人の話し合いによって、誰がどの財産を取得することになったのか」
を記載する書類です。
例えば、
父が亡くなり、母・長男・長女が法定相続人であることは、法定相続情報一覧図によって確認できます。
しかし、
「自宅は母が取得する」
「A銀行の預金は長男が取得する」
「B銀行の預金は長女が取得する」
という遺産の分け方までは、法定相続情報一覧図には記載されません。
したがって、
法定相続情報一覧図=誰が相続人か
遺産分割協議書=誰が何を相続するか
と考えると分かりやすいでしょう。
遺産分割協議書については、「遺産分割協議書とは」の記事で詳しく解説しています。
11.相続放棄をした人は一覧図から消える?
これも注意が必要です。
相続放棄をした人についても、原則として法定相続情報一覧図には氏名等が記載されます。
法定相続情報証明制度は、戸籍等の記載から法定相続人を明らかにする制度であり、相続放棄や遺産分割協議の結果を証明する制度ではないためです。
したがって、
「一覧図に名前が載っているから、この人は相続放棄をしていない」
と判断することはできません。
同じように、遺産分割協議によって財産を一切取得しない相続人であっても、戸籍上の法定相続人であれば一覧図には記載されます。
法定相続情報一覧図は、あくまで戸籍等に基づく法定相続関係を示す書類であることを理解しておきましょう。
12.どのような場合に取得すると便利?
法定相続情報一覧図は、すべての相続で必ず取得しなければならない書類ではありません。
例えば、
「相続財産は一つの銀行口座だけ」
というケースで、その他にほとんど手続きがなければ、わざわざ一覧図を取得するメリットが小さい場合もあります。
一方、
- 銀行口座が複数ある
- 不動産がある
- 証券会社でも相続手続きがある
- 相続税申告が必要
- その他にも複数の相続手続きがある
という場合には、法定相続情報一覧図を取得しておくメリットが大きくなります。
特に、複数の金融機関で相続手続きを行う場合には、戸籍一式を何度も提出する負担を減らし、複数の手続きを並行して進めやすくなります。
戸籍収集が終わった段階で、
「この後、何か所で相続手続きを行うことになるのか」
を確認して、利用するかどうかを判断するとよいでしょう。
13.法定相続情報一覧図の作成・申出は行政書士へ依頼できます
法定相続情報証明制度は、ご自身で利用することもできます。
一方で、この制度を利用するためには、
必要な戸籍を収集する
↓
法定相続人を正確に確認する
↓
一覧図を作成する
↓
必要書類をそろえて法務局へ申し出る
という作業が必要です。
また、兄弟姉妹や甥・姪が相続人となる場合などには、戸籍収集だけでもかなりの量になることがあります。
法定相続情報証明制度の申出は、行政書士を含む一定の資格者代理人へ依頼することができます。
行政書士なかじま法務事務所では、
- 戸籍収集
- 相続人調査
- 相続関係説明図の作成
- 法定相続情報一覧図の作成
- 遺産分割協議書の作成
- 銀行・預貯金の相続手続き
まで、ご依頼内容に応じてサポートしております。
「法定相続情報一覧図を作った方がよいのかわからない」
という場合にも、その後に必要となる相続手続きを確認したうえでご案内いたします。
まとめ
法定相続情報一覧図は、戸籍等をもとに作成した法定相続関係について法務局の登記官が確認し、認証文を付した写しを交付する制度です。
特に、銀行、不動産、証券会社など複数の相続手続きを行う場合には、大量の戸籍一式を何度も提出する負担を減らせるというメリットがあります。
ただし、法定相続情報一覧図を作成するためには、最初に必要な戸籍を収集し、法定相続人を確認する必要があります。
また、
法定相続情報一覧図は「誰が法定相続人なのか」を示す書類
であり、
遺産分割協議書は「誰がどの財産を取得するのか」を示す書類
です。
相続放棄や遺産分割の結果まで一覧図が証明するものではありません。
行政書士なかじま法務事務所では、戸籍収集・相続人調査から法定相続情報一覧図の作成、遺産分割協議書の作成、銀行・預貯金の相続手続きまでサポートしております。
関連記事
相続手続きについて詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。
東京都台東区で「お困りごとを解決する」行政書士をしております。
医療法人設立サポート、遺言・相続などのご相談を承っております!




