お役立ちコラム

医療法人が診療所を廃止するときの手続き

複数の診療所を運営する医療法人が、そのうちの一つを閉院することがあります。

「診療所を廃止するなら、保健所に廃止届を出せば終わり」と思われるかもしれません。しかし、医療法人の場合は、診療所の廃止に伴う定款の変更、法人登記、保険医療機関としての届出なども確認する必要があります。

この記事では、医療法人は存続し、複数ある診療所のうち一つだけを廃止する場合に絞って、手続きの流れと注意点を解説します。

診療所の廃止と医療法人の解散は別の手続き

例えば、医療法人が本院と分院を運営しており、分院だけを閉院して本院での診療を続ける場合、廃止するのは分院という診療所です。医療法人そのものが解散するわけではありません。

そのため、廃止する診療所についての手続きを進める一方で、医療法人としての運営や、残る診療所での診療は続きます。

なお、法人が運営する最後の診療所を廃止する場合は、法人の今後の事業や存続について別途検討が必要です。この記事で扱う「一つの診療所を廃止し、ほかの診療所は続ける場合」とは分けて考えましょう。

まず定款と廃止予定日を確認する

医療法人の定款(財団医療法人の場合は寄附行為)には、開設する診療所の名称や所在地などが定められています。診療所を一つ廃止する場合には、通常、廃止する診療所を定款等から削除する変更が必要です。

東京都の「医療法人運営の手引」でも、既存診療所の廃止は定款・寄附行為変更の対象として挙げられています。変更には、法人内で必要な決議を行ったうえで、所管庁に認可を申請します。

東京都は、定款等の変更について、事前審査から認可書の交付まで3か月程度を見込むよう案内しています。補正などによってさらに時間がかかることもあるため、閉院日を決めてから手続きを調べ始めるのではなく、早い段階で所管庁に相談することが大切です。

東京都「医療法人運営の手引(定款・寄附行為変更手続)」

医療法人内で決議し、定款変更認可を申請する

定款等の変更に先立ち、法人の形態や定款等の定めに従って、社員総会などで必要な決議を行います。

そのうえで、所管庁に定款・寄附行為の変更認可を申請します。提出書類や審査の進め方は所管庁によって異なるため、廃止する診療所の情報、廃止理由、予定日、残る診療所の運営体制などを整理して確認します。

また、診療所の廃止に伴って医療法人の登記事項が変わる場合には、必要な変更登記を行い、所管庁への登記事項の届出も確認します。東京都は、診療所の廃止を登記事項の届出が必要となる主な例に挙げています。

東京都「医療法人の登記事項の届出」

廃止した診療所について保健所へ届け出る

診療所を廃止した後は、診療所を管轄する保健所に廃止届を提出します。

東京都の保健所の案内では、廃止後10日以内の届出とされています。開設時の届出書や、法人開設の場合は開設許可書の添付を求める取扱いもあります。必要書類や提出方法は管轄保健所の案内を確認してください。

ここで注意したいのは、医療法人の定款変更認可申請と、保健所への診療所廃止届は別の手続きだということです。提出先も時期も異なるため、両方を予定表に入れて管理しましょう。

東京都多摩府中保健所「診療所・歯科診療所を休止、廃止された方」

保険医療機関の廃止も地方厚生局に届け出る

廃止する診療所が保険医療機関の指定を受けている場合には、保健所への廃止届とは別に、地方厚生局への廃止の届出が必要です。

関東信越厚生局は、保険医療機関が廃止した場合の届出手続きを案内しています。保健所に届け出ただけで、保険医療機関としての手続きまで完了するわけではありません。

廃止する診療所で施設基準の届出や、ほかの公費負担医療等の指定を受けている場合も、各制度の担当窓口で必要な手続きを確認します。

関東信越厚生局「保険医療機関・保険薬局の廃止・休止・再開の届出」

管理者が法人の理事を兼ねている場合にも注意

医療法人が開設する診療所の管理者は、原則として法人の理事に加える必要があります。

廃止する診療所の管理者が、その診療所の管理者であることを理由に理事に就任していた場合は、閉院後も理事を続けるのか確認が必要です。東京都の手引では、管理者たる理事が管理者の職を退いたときは理事の職を失い、引き続き理事を務める場合は再任の手続きを行うよう案内しています。

法人の役員構成や必要な役員数にも関わるため、診療所の廃止手続きと併せて確認しておきましょう。

東京都「医療法人運営の手引(各種届出)」

届出以外にも、患者・職員・契約関係の整理が必要

行政手続きと並行して、閉院後に問題が残らないよう、実務面も整理する必要があります。

例えば、次のような項目です。

  • 通院中の患者への案内と、継続して診療を受けられる体制の検討
  • 診療録などの保管・引継ぎ方法
  • 職員の配置転換や雇用に関する対応
  • 賃貸借契約、医療機器のリース、委託契約の整理
  • エックス線装置や麻薬に関する届出・免許など、診療内容に応じた手続き
  • ホームページ、予約システム、医療機関情報の掲載内容の更新

患者を法人内の別の診療所へ案内する場合でも、廃止する診療所と残る診療所は別の医療機関です。診療情報の取扱いや、残る診療所で必要となる体制を個別に確認しましょう。

手続きの順番を早めに整理しましょう

医療法人が診療所を一つ廃止する際は、おおむね次の順番で検討します。

  1. 廃止予定日と、残る診療所の運営体制を整理する
  2. 所管庁・保健所・地方厚生局に必要な手続きを確認する
  3. 法人内の決議を行い、定款等の変更認可を申請する
  4. 必要な変更登記と所管庁への登記事項の届出を確認する
  5. 診療所の廃止後、保健所と地方厚生局へそれぞれ届け出る
  6. 管理者・役員、患者対応、職員、各種契約を整理する

実際の順序や必要書類は、医療法人を所管する自治体、診療所の所在地、法人の定款等によって変わります。閉院日から逆算して、複数の提出先を一つの予定表にまとめることが重要です。

まとめ

複数の診療所を運営する医療法人が一つの診療所を廃止する場合、医療法人自体は存続します。しかし、保健所への廃止届だけで手続きが終わるわけではありません。

定款等の変更認可、必要な変更登記と届出、保険医療機関としての廃止届、管理者と役員の関係などを確認する必要があります。患者や職員への対応も含め、早めに閉院までの計画を立てましょう。

行政書士なかじま法務事務所では、医療法人や診療所に関する行政手続きの整理・申請をサポートしています。東京・千葉・埼玉・神奈川で診療所の廃止をご検討の際は、ご相談ください。

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