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医療法人の分院開設に必要な手続き

医療法人として診療所を運営していると、「別の地域にも診療所を設けたい」「新しい診療所を勤務医に任せたい」と、分院の開設を検討することがあります。

しかし、分院は物件を借りて内装を整えれば開設できるものではありません。既存の医療法人に新たな診療所を追加する手続きと、新しい診療所そのものを開設する手続きを、それぞれ進める必要があります。

さらに、分院で保険診療を行う場合は、地方厚生局による保険医療機関の指定も必要です。手続きの順序を確認せずに開設日を決めると、予定した日から保険診療を始められないおそれがあります。

この記事では、医療法人が分院を開設するときの主な手続きと、計画段階で確認したいポイントを解説します。

医療法人の分院開設では、法人と診療所の両方に手続きが必要です

ここでいう「分院」とは、既存の医療法人が、現在の診療所とは別に新たな診療所を開設することを指します。

例えば、東京都内で診療所を運営する医療法人が、千葉県内に二つ目の診療所を設ける場合です。同じ医療法人が開設者であっても、新しい診療所についての開設手続きや保険医療機関の指定を省略することはできません。

分院開設では、主に次の手続きを確認します。

  1. 医療法人の定款変更認可申請
  2. 定款変更に伴う法人登記など
  3. 新しい診療所を管轄する保健所への開設許可申請・開設届
  4. 新しい診療所を管轄する地方厚生局への保険医療機関指定申請
  5. 診療内容に応じた施設基準等の届出

このほか、設備や取り扱う医薬品等に応じて、追加の許可・届出が必要になる場合があります。

STEP1 分院の計画と管理者を先に決める

申請書類を作り始める前に、分院の基本計画を整理します。

  • 分院を設ける場所と開設予定日
  • 医科・歯科の別、診療科目、診療日・診療時間
  • 診療所の管理者となる医師または歯科医師
  • 予定する職員数、設備、医療機器
  • 物件の賃貸借条件と内装工事の予定
  • 開設資金、借入れ、開設後の収支見込み

特に重要なのが、分院の管理者を誰にするかという点です。医療法人は、原則として、開設する各診療所の管理者を理事に加える必要があります。新しい分院の管理者が現在の理事ではない場合は、役員構成や定款上の理事の定数も確認します。例外的な取扱いの可否は、所管する行政庁への確認が必要です。www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp

また、本院の管理者が分院も兼ねる計画であれば、複数の診療所の管理に関する許可の要否や、実際の勤務体制を事前に確認する必要があります。「理事長が両方を見ればよい」と考えて準備を進めることは避けましょう。

STEP2 分院の追加について定款変更認可を受ける

医療法人が新しい診療所を開設する場合、通常は定款に定める診療所に分院を追加するため、所管する都道府県等への定款変更認可申請が必要です。

東京都が所管する医療法人については、東京都が、診療所の開設前に定款変更認可を受け、必要な法人登記を済ませるよう案内しています。東京都の手引では、事前審査から認可書の交付まで3か月程度を要するとされています。これは東京都が示す目安であり、案件の内容や申請先によって期間は異なります。www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp

申請では、変更後の定款案だけでなく、法人内で分院開設を決定した議事録、分院の概要、管理者に関する資料、事業計画や予算書などが必要になります。提出書類は、所管庁の最新の手引で確認します。

なお、分院が本院と異なる都県に所在する場合、医療法人の定款変更を所管する行政庁と、分院の開設を扱う保健所が異なります。それぞれの窓口に必要な資料と手続きの順序を確認しましょう。

STEP3 認可後に必要な法人登記を確認する

定款変更の認可を受けた後は、変更内容に応じた法人登記を確認します。登記が必要な事項と期限は、認可内容や法人の登記事項に応じて確認し、登記申請は司法書士と連携して進めます。

「定款変更の認可が下りたので、すぐに保健所へ開設申請を出せる」とは限りません。東京都は、診療所の開設手続きに先立って法人登記を済ませるよう案内しています。開設予定日を決める際には、認可から登記完了までの期間も見込む必要があります。www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp

STEP4 保健所に診療所開設許可を申請する

医療法人が診療所を開設する場合には、原則として、開設地を管轄する保健所等から事前に診療所開設許可を受けます。許可を受けた後、実際に開設した日から10日以内に開設届を提出します。www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp

保健所への相談は、できれば物件契約や内装工事を確定する前に行いましょう。診察室の配置、待合室、動線、設備などについて、計画段階で図面を示して確認するためです。

開設地や診療内容によって、求められる設備・図面・添付書類は異なります。東京都内であっても管轄保健所の案内を確認し、千葉県・埼玉県・神奈川県に分院を設ける場合も、開設地の窓口に事前相談を行いましょう。

STEP5 厚生局に保険医療機関の指定を申請する

分院で保険診療を行うには、新しい診療所について、地方厚生局に保険医療機関の指定申請を行います。本院がすでに指定を受けていても、その指定だけで分院の保険診療を始めることはできません。

指定申請の提出先は、新しい診療所の所在地を管轄する厚生局の窓口です。関東信越厚生局では、都県ごとに指定申請の締切日が定められています。希望する保険診療開始日から逆算して、開設許可、開設届、指定申請に必要な書類の準備時期を確認しましょう。kouseikyoku.mhlw.go.jp

また、施設基準の届出が必要な診療報酬を算定する予定がある場合は、指定申請とは別に、要件と届出時期を確認します。

なお、外来医師過多区域に指定された地域で新たに無床診療所を開設する場合には、開設前の事前届出が必要となる制度があります。分院の予定地が対象となるか、計画段階で都県の最新情報を確認してください。kouseikyoku.mhlw.go.jp

分院開設で予定が遅れやすいポイント

分院開設の準備では、次のような点が開設予定日に影響します。

  • 定款変更認可の期間を見込んでいない: 内装工事だけを基準に開設日を決めると、法人側の手続きが間に合わないことがあります。
  • 管理者と理事の関係を確認していない: 管理者の選任に伴い、役員の選任や定款上の理事定数の確認が必要になる場合があります。
  • 図面を固めてから保健所へ相談する: 構造設備について修正を求められると、工事や開設日程に影響します。
  • 厚生局の締切日を見落とす: 保健所の手続きが済んでも、希望する日から保険診療を始められない可能性があります。
  • 本院と分院で同じ届出が使えると考える: 新しい診療所について、保険医療機関の指定や必要な施設基準の届出を確認する必要があります。

特に、本院と分院が異なる都県にある場合は、法人の所管庁、分院所在地の保健所、厚生局の各窓口に確認する事項を分けて整理することが大切です。

まずは開設予定日から逆算して手続きを整理しましょう

医療法人の分院開設では、定款変更認可、法人登記、診療所開設許可、開設届、保険医療機関指定申請を、順序と所要期間を意識して進める必要があります。

行政書士なかじま法務事務所では、医療法人の現行定款や役員構成、分院の計画を確認し、行政庁・保健所・地方厚生局への手続きを整理します。法人登記が必要な場合は、司法書士と連携して進めます。

分院の物件を検討している段階や、開設予定時期だけが先に決まっている段階でもご相談いただけます。

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参考資料

※実際の必要書類、申請方法、審査期間、指定申請の締切日は、医療法人の所管庁と分院の開設地によって異なります。具体的な計画については、各窓口の最新の案内をご確認ください。

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