お役立ちコラム
9.102024
尊厳死宣言 をしたいけど、何から始めればいいの?

「もし自分が病気で回復の見込みがなく、ただ管につながれて生き続けるだけになったら…」 近年、人生の最期を自分らしく迎えたいと考える方が増えています。延命治療に関するご自身の意思を明確に示す「尊厳死宣言」への関心も高まっています。
しかし、「尊厳死宣言って具体的に何?」「どうやって準備すればいいの?」「家族にはどう伝えれば…」といった疑問や不安をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
この記事では、終活や相続の専門家である行政書士が、「尊厳死宣言」について、その意味から具体的な手続き、メリット・デメリット、よくある疑問まで、分かりやすく解説します。ご自身の意思を尊重し、ご家族の負担も軽減できる尊厳死宣言について、一緒に考えていきましょう。
1. 尊厳死宣言(リビングウィル)とは?
尊厳死宣言の定義と目的
尊厳死宣言とは、将来ご自身が病気や事故により回復不能な末期状態(終末期)に陥った場合に備えて、「延命のためだけの治療は希望せず、人間としての尊厳を保ったまま自然な死を迎えたい」という意思を、元気なうちに書面で表明しておくものです。「リビングウィル(生前の意思)」と呼ばれることもあります。
その主な目的は、ご自身の意思を家族や医療関係者に明確に伝え、終末期における医療方針決定の指針としてもらうことです。意識がなくなり、自分で意思を伝えられなくなった状況でも、ご自身の望む形で最期を迎えられるように準備しておくための大切な意思表示です。
安楽死との明確な違い
尊厳死と安楽死は混同されがちですが、全く異なる概念です。
- 尊厳死: 回復の見込みがない状態での**延命治療を「拒否」**し、自然な経過に任せて死を迎えること(消極的安楽死に近い考え方ですが、日本では「尊厳死」として区別されます)。
- 安楽死: 患者の耐え難い苦痛を除去するために、医師などが薬物投与などによって積極的に患者の死期を早める行為。日本では法律で認められていません。
尊厳死宣言は、あくまで「過剰な延命措置」を拒否する意思表示であり、死を積極的に早めるものではありません。
なぜ今、尊厳死宣言が注目されるのか
高齢化社会の進展や医療技術の高度化により、かつては助からなかった命が救えるようになった一方で、回復の見込みがないまま生命維持装置につながれて長期間療養するケースも増えています。
このような状況を背景に、「自分の最期は自分で決めたい」「家族に延命治療の判断で負担をかけたくない」「人間としての尊厳を保って最期を迎えたい」と考える人が増え、尊厳死宣言への関心が高まっています。
2. 尊厳死宣言を行うメリット|自分の意思を尊重し、家族を守る
尊厳死宣言を作成しておくことには、以下のようなメリットがあります。
- 本人の意思が尊重される: 最も大きなメリットです。ご自身の終末期医療に関する希望を明確に示すことで、意思能力がなくなった後も、その意思に基づいた医療を受けられる可能性が高まります。
- 家族の精神的・判断の負担を軽減できる: 万が一の際、延命治療を続けるか否かの判断は、ご家族にとって非常に重い決断です。本人の意思が書面で残されていれば、家族はその意向に沿って判断しやすくなり、精神的な負担や家族間での意見対立を避けられる可能性があります。
- 医療チームとの意思疎通が円滑になる: 尊厳死宣言書は、医師や看護師などの医療チームに対して、本人の明確な意思を伝える重要なツールとなります。これにより、本人の希望に沿ったケアが行われやすくなります。
- 望まない延命治療を避けられる: 回復の見込みがないにも関わらず、ただ生命を維持するためだけの治療を避け、身体的な苦痛や経済的な負担を軽減することにつながります。
- 自分らしい最期を迎える安心感: 自分の人生の終え方を自分で決めておくことで、「もしもの時」への漠然とした不安が和らぎ、心穏やかに過ごせるという精神的なメリットもあります。
3. 尊厳死宣言の注意点・デメリット|知っておくべきこと
多くのメリットがある一方で、尊厳死宣言には注意すべき点やデメリットも存在します。
- 法的拘束力には限界がある: 尊厳死宣言書、特に公正証書として作成されたものは、本人の意思を示す重要な証拠として尊重されます。しかし、現行法上、医師に対して延命治療の中止を法的に強制する効力まではありません。最終的な医療判断は、その時点での医学的状況や倫理観に基づき、医師や医療チームが行います。ただし、公正証書は本人の真摯な意思として極めて重く受け止められる傾向にあります。
- 家族間の意見対立の可能性: 事前に家族と十分に話し合い、理解を得ておくことが非常に重要です。もし家族の中に反対意見がある場合、宣言書があってもスムーズに受け入れられない可能性があります。
- 医療現場での受け止め方は一様ではない: 尊厳死に対する考え方は、医師や医療機関によって異なる場合があります。全ての医療機関が尊厳死宣言書の内容通りに対応するとは限りません。かかりつけ医がいる場合は、事前に相談しておくことも有効です。
- 社会的理解が十分でない側面も: 尊厳死に対する社会的な理解は深まりつつありますが、まだ偏見や誤解を持つ人もいるかもしれません。
- 意思能力の変化: 認知症などにより、宣言書作成時と状況が変わる可能性も考慮する必要があります。定期的な見直しが推奨されます。
これらの注意点を理解した上で、慎重に準備を進めることが大切です。
4. 尊厳死宣言の手続き方法|公正証書作成までの流れ
尊厳死宣言を行うための具体的なステップを解説します。公正証書として作成することが、その意思の証明力や実現可能性を高める上で最も推奨される方法です。
STEP1: 意思の明確化と家族との話し合い
まず、ご自身がどのような終末期医療を望み、どのような治療は受けたくないのかを具体的に考え、整理します。 そして、その考えをご家族に伝え、なぜそう考えるのか理由も含めて丁寧に話し合いましょう。ご家族の理解と協力は、尊厳死宣言の実現にとって不可欠です。
STEP2: 尊厳死宣言書の作成(記載内容と方法)
尊厳死宣言書に決まった書式はありませんが、以下の内容を盛り込むのが一般的です。
- 宣言者の氏名、生年月日、住所
- 回復不能な末期状態に陥った場合の延命治療(人工呼吸器、人工栄養・水分補給、心肺蘇生など)を拒否する意思
- 苦痛緩和のための措置(緩和ケア)は希望する意思
- 家族へのメッセージ
- 作成年月日、署名・捺印
- (任意)意思決定を託す代理人の指定
作成方法は、ご自身で作成することも可能ですが、法的な有効性や意思の明確性を担保するためには、行政書士などの専門家に相談・依頼することをおすすめします。専門家は、ご意向を正確に反映し、法的に問題のない文書作成をサポートします。
STEP3: 公正証書化とそのメリット・手続き
作成した尊厳死宣言書は、公証役場で公正証書にすることを強く推奨します。
- 公正証書のメリット:
- 高い証明力: 公証人が本人の意思確認の上で作成するため、後日、宣言書の有効性が争われるリスクを低減できます。
- 原本の保管: 公証役場に原本が原則20年間保管されるため、紛失や改ざんの心配がありません。
- 法的効力の強化: 医師や家族に対し、本人の真摯かつ最終的な意思であることを強く示すことができます。
- 公正証書作成の手続き:
- 原案作成: ご自身または専門家が宣言書の原案を作成します。
- 公証役場との打ち合わせ: 事前に公証役場に連絡し、必要書類(本人確認書類、印鑑証明書など)を確認、予約します。
- 公証役場での作成: 公証人の面前で、宣言書の内容を確認し、署名・捺印します。
- 費用: 公証役場の手数料(通常1万円~2万円程度)が必要です。専門家に依頼する場合は別途報酬が発生します。
STEP4: 大切な書類の保管と共有
作成した尊enegro死宣言公正証書の**正本(または謄本)**は、すぐに取り出せる場所に保管し、その場所を家族や信頼できる人(意思決定代理人など)に伝えておきましょう。
エンディングノートに宣言書の存在や保管場所を記載しておくのも有効です。また、可能であれば、かかりつけ医にもコピーを渡し、情報を共有しておくことが望ましいです。
STEP5: 定期的な見直しと変更・撤回
人の考えや医療状況は変化する可能性があります。尊厳死宣言書は、一度作成したら終わりではなく、定期的に(例えば数年ごとや、大きな病気をした際などに)内容を見直し、必要であれば変更・撤回することが可能です。
変更・撤回する場合も、公正証書で作成し直すか、または法的に有効な方法で行う必要があります。
5. 尊厳死宣言に関するQ&A
Q1. 尊厳死宣言は誰でも作成できますか? A1. 原則として、宣言内容を理解し、ご自身の意思を明確に判断・表明できる能力(意思能力)がある方であれば、誰でも作成できます。年齢制限はありませんが、判断能力が不十分な状態では作成できません。
Q2. 尊厳死宣言書(公正証書)の費用はどれくらいかかりますか? A2. 公証役場で公正証書にする際の手数料は、通常1万数千円程度です。行政書士などの専門家に書類作成や手続き代行を依頼する場合は、別途報酬が必要となります。費用については事前にご確認ください。
Q3. いつ作成するのが良いですか? A3. 特に決まった時期はありませんが、ご自身の意思がはっきりしており、心身ともに健康なうちに作成しておくことをお勧めします。終活の一環として、早めに準備を始める方が増えています。
Q4. 尊厳死宣言書があれば、必ず希望通りになりますか? A4. 公正証書であっても、前述の通り医師に対する法的な強制力はありません。しかし、本人の明確な意思として最大限尊重される可能性は高いです。ただし、急変時など、状況によっては宣言書の内容を確認する時間がない場合や、医学的判断が優先される場合もあり得ます。家族やかかりつけ医との事前の情報共有が重要です。
Q5. 遺言書との違いは何ですか? A5. 尊厳死宣言書は、主に終末期の医療に関する意思表示をするための書類です。一方、遺言書は、ご自身の死後の財産の分配や身分に関すること(子の認知など)について定める書類です。目的と内容が異なりますが、どちらも終活において重要な書類であり、連携して準備することが望ましい場合もあります。
Q6. リビングウィルや事前指示書とは違うのですか? A6. 「尊厳死宣言」「リビングウィル」「事前指示書」は、ほぼ同じ意味で使われることが多いです。いずれも、将来の医療やケアに関する本人の意思を事前に示しておくものです。
6. 尊厳死宣言は行政書士に相談すべき?|専門家への依頼メリット
尊厳死宣言書の作成はご自身でも可能ですが、法律の専門家である行政書士に相談・依頼することには大きなメリットがあります。
- 専門的な知識に基づいたアドバイス: 尊厳死に関する法律やガイドライン、実務上の注意点など、専門的な知識に基づいた的確なアドバイスを受けられます。
- 法的に有効な書類作成のサポート: ご自身の意思を正確に反映し、かつ法的な要件を満たした尊厳死宣言書の作成をサポートします。公正証書にする際の手続きもスムーズに進められます。
- 家族との話し合いのサポート: 必要に応じて、ご家族への説明の仕方や、話し合いの進め方についてアドバイスを受けることも可能です。
- 遺言・相続手続きとの連携: 尊厳死宣言だけでなく、遺言書の作成や相続に関する手続きなど、終活全般についてワンストップで相談できる場合があります。これにより、全体を見据えた最適な準備が可能になります。
- 安心感と確実性: 専門家が関与することで、手続きの不備を防ぎ、ご自身の意思が将来確実に尊重される可能性を高めることができます。
7. まとめ|自分らしい最期を迎えるために
尊厳死宣言は、ご自身の人生の最期を主体的に決定し、尊厳を保つための重要な選択肢です。また、残されるご家族の負担を軽減することにもつながります。
しかし、その作成には法的な知識や、ご家族との丁寧なコミュニケーションが不可欠です。後悔しないためには、元気なうちからご自身の意思を整理し、信頼できる専門家も交えながら、しっかりと準備を進めることが大切です。
8. 【行政書士なかじま法務事務所】がお手伝いできること
私たち行政書士なかじま法務事務所は、東京都台東区を拠点に、尊厳死宣言書の作成サポートをはじめ、遺言書作成、相続手続きなどを専門とする行政書士事務所です。
- 尊厳死宣言に関する丁寧なヒアリングとアドバイス
- ご意向に沿った尊厳死宣言書の文案作成
- 公証役場での公正証書作成手続きのサポート・代行
- 遺言書作成、相続手続きとの連携サポート
豊富な経験と実績に基づき、お客様一人ひとりの想いに寄り添い、法的な観点から最適なご提案をさせていただきます。「何から始めればいいかわからない」「家族にどう切り出せば…」といったご不安やお悩みも、どうぞお気軽にご相談ください。
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