お役立ちコラム
12.112023
公正証書遺言 のメリット・デメリットを解説

ご自身の亡き後、残された大切なご家族が相続財産をめぐって争うことになってしまったら…。そんな悲しい事態は、誰しも避けたいと願うはずです。
遺産分割協議がスムーズに進まず、家族間に亀裂が入ってしまうケースは残念ながら少なくありません。そうした将来のトラブルを未然に防ぐための最も確実な方法の一つが、「公正証書遺言」を作成することです。
この記事では、相続手続きの専門家である行政書士が、公正証書遺言とは何か、そのメリット・デメリット、具体的な作成手順、必要書類について、分かりやすく解説します。自筆証書遺言との違いも踏まえ、なぜ公正証書遺言がおすすめなのかをご理解いただけるはずです。
公正証書遺言とは? 安全・確実な遺言方式
公正証書遺言とは、公証役場において、公証人という法律の専門家が関与して作成する、法的に最も安全で確実性の高い遺言書のことです。
遺言者が遺言の内容を公証人に口頭で伝え(口授)、それを公証人が文章にまとめ、遺言者と証人2名以上が署名・押印することで完成します。
実務上は、事前に遺言者(または依頼を受けた専門家)と公証人が綿密に打ち合わせを行い、遺言内容を固めた上で、作成当日に最終確認と署名・押印を行う流れが一般的です。
公正証書遺言を作成するメリット|なぜおすすめなのか?
自筆証書遺言と比較して、公正証書遺言には以下のような大きなメリットがあります。相続トラブル防止の観点からも、費用をかけてでも作成する価値があると言えます。
- ① 無効になるリスクが極めて低い
公証人が内容を確認し、法律の定める方式に従って作成するため、形式不備で遺言が無効になる心配がほとんどありません。内容が不明確で後の相続手続きに支障が出る、といったリスクも避けられます。 - ② 紛失・改ざんの心配がない
作成された公正証書遺言の原本は公証役場に厳重に保管されます(原則として遺言者が120歳になるまで)。自宅保管による紛失、盗難、あるいは相続人の誰かによる隠匿・改ざんといったリスクを防げます。 - ③ 家庭裁判所の「検認」が不要
自筆証書遺言の場合、相続開始後に家庭裁判所で「検認」という手続きが必要となり、相続人に手間と時間がかかります。公正証書遺言なら検認手続きが不要なため、相続手続きをスムーズに進めることができます。 - ④ 文字が書けなくても作成可能
病気や高齢などの理由で自筆が難しい場合でも、公証人に口頭で意思を伝えられれば作成が可能です(※別途要件あり)。公証人が自宅や病院へ出張して作成することもできます。
公正証書遺言のデメリットと注意点
多くのメリットがある一方、以下のようなデメリット(注意点)も存在します。
- ① 公証人手数料がかかる 遺産の価額に応じて、法律で定められた公証人手数料が必要です。自筆証書遺言に比べて費用がかかりますが、相続トラブル防止や手続きの確実性を考えれば、かけるべき費用と言えるでしょう。(※費用の目安は別途記載するか、公証役場HPへのリンクを貼ると親切です)
- ② 証人2名が必要 作成当日は、遺言者と公証人の他に、信頼できる証人2名の立会いが必要です。推定相続人(将来相続人になる可能性のある人)や未成年者などは証人になれません。適当な証人が見つからない場合は、行政書士などの専門家や、公証役場で紹介してもらえる場合もありますのでご相談ください。
- ③ 事前準備に時間と手間がかかる 公証人との打ち合わせや必要書類の収集など、作成までに一定の時間と手間がかかります。思い立ってすぐに作成できるわけではありません。
【5ステップ】公正証書遺言 作成の基本的な流れ
公正証書遺言を作成する際の一般的な流れを解説します。
- STEP1:遺言内容の検討と事前相談
誰に、どの財産を、どのくらい相続させたい(遺贈したい)か、具体的な遺言内容を検討します。不明点や心配事があれば、この段階で行政書士などの専門家や、お近くの公証役場に相談しましょう。当事務所でも初回相談を承っております。 - STEP2:必要書類の収集
遺言の内容に応じて、後述する必要書類を収集します。戸籍謄本や印鑑証明書など、取得に時間がかかるものもあるため、早めに準備を始めましょう。 - STEP3:公証人との打ち合わせ・遺言書案の作成
収集した書類をもとに、公証人と遺言内容について打ち合わせを行います。打ち合わせ内容に基づき、公証人が遺言書の原案を作成します。専門家に依頼している場合は、専門家が公証人との間に入って調整を進めることも可能です。 - STEP4:遺言書案の確認と作成日時の予約
公証人が作成した遺言書案の内容に間違いがないか、ご自身の意思が正確に反映されているかを確認します。問題がなければ、証人2名の都合も確認の上、公証役場で作成する日時を予約します。 - STEP5:公証役場にて作成・署名押印
予約日時に、遺言者、証人2名が公証役場に出向きます。公証人が遺言書の内容を読み上げ、内容を確認した後、遺言者、証人、公証人がそれぞれ署名・押印します。最後に公証人手数料を支払い、公正証書遺言の「正本」と「謄本」を受け取って完了です。
公正証書遺言の作成に必要な書類一覧
必要書類は、遺言の内容や財産の種類によって異なりますが、一般的に以下のものが必要になります。
【基本書類】
- 遺言者の印鑑証明書(発行後3ヶ月以内)
- 遺言者の戸籍謄本
- 相続人の戸籍謄本(遺言者との続柄がわかるもの)
- 財産を受け取る人(受遺者)の住民票(相続人以外の場合)
- 証人2名の住民票(氏名、住所、生年月日、職業を伝えるメモでも可の場合あり)
【財産に関する書類(例)】
不動産:
- 登記事項証明書(登記簿謄本)
- 固定資産評価証明書 または 固定資産税・都市計画税納税通知書中の課税明細書
- (可能であれば)名寄帳
- ポイント:登記漏れがないように注意し、将来の登記手続きがスムーズに進む正確な記載が必要です。
預貯金:
- 通帳のコピー(金融機関名、支店名、口座番号、名義人がわかるページ)
株式・投資信託など:
- 証券会社名、支店名、口座番号などがわかる取引残高報告書などのコピー
生命保険など:
- 保険証券のコピー(保険会社名、証券番号、受取人などがわかるもの)
※事案によって必要書類は異なりますので、必ず事前に公証人または依頼する専門家にご確認ください。
作成当日の流れと注意点(公証役場にて)
作成当日は、通常、以下のような流れで進みます。
- 本人確認・意思確認: 公証人が遺言者本人であること、遺言能力(判断能力)があることを確認します。
- 遺言内容の読み聞かせ: 公証人が、作成した遺言書の原稿を遺言者と証人に読み聞かせます。(遺言者が読み上げられない場合は、公証人が代読し、遺言者が内容を確認します)
- 内容確認: 遺言者と証人は、読み聞かせられた内容が遺言者の真意と合っているかを確認します。
- 署名・押印: 内容に問題がなければ、遺言者、証人2名がそれぞれ遺言書に署名し、押印します。遺言者は実印を使用します。
- 公証人の署名・押印: 最後に公証人が、法に定める方式に従って作成された旨を付記して署名・押印し、公正証書遺言が完成します。
- 手数料の支払い・正本/謄本の受領: 公証人手数料を支払い、公正証書遺言の「正本」と「謄本」を受け取ります。原本は公証役場に保管されます。
【注意点】
- 原則として、作成の場には遺言者、公証人、証人2名以外は同席できません。付き添いのご家族は室外で待機していただくことになります。
- 遺言者は実印と印鑑証明書(事前に提出済みの場合を除く)、証人は認印(シャチハタ不可)を持参する必要があります。
公正証書遺言作成は行政書士への相談がおすすめ
ここまで見てきたように、公正証書遺言の作成には、事前の準備や書類収集、公証人との調整など、専門的な知識と手間が必要です。
特に、財産の種類が多い、相続関係が複雑、ご自身の意思を法的に正確な文章で表現したい、といった場合には、相続・遺言の専門家である行政書士にご相談いただくことを強くお勧めします。
行政書士にご依頼いただくメリットは以下の通りです。
- ご意向を丁寧にヒアリングし、最適な遺言内容をご提案
- 複雑な必要書類の収集代行
- 公証人との打ち合わせ代行・調整
- 正確で漏れのない遺言書案作成のサポート
- 証人の手配(※事務所によります。当事務所では対応可能です)
- 作成当日の同行サポート(※別途費用の場合あり)
面倒な手続きは専門家に任せることで、ご自身の負担を大幅に軽減し、安心して確実に公正証書遺言を作成することができます。
まとめ|円満な相続の実現のために
今回は、公正証書遺言のメリット・デメリット、作成の流れについて詳しく解説しました。
遺言書は、残されたご家族への最後のメッセージであると同時に、相続トラブルを防ぐための重要な法的文書です。その中でも公正証書遺言は、最も安全で確実性の高い方式であり、円満な相続を実現するための有効な手段です。
自筆証書遺言の手軽さも魅力ですが、無効リスクや検認の手間などを考慮すると、専門家が関与する公正証書遺言の作成を強くお勧めします。
当事務所では、公正証書遺言の作成に関するご相談から、書類収集、公証人との調整、作成当日のサポートまで、一貫してお手伝いさせていただいております。初回のご相談は無料ですので、まずはお気軽にお問い合わせください。あなたと、あなたの大切なご家族のために、最適な遺言書作りをサポートいたします。
東京都台東区で「お困りごとを解決する」行政書士をしております。
遺言・相続・医療法人設立・建設業許可・会社設立などのご相談を承っております!