お役立ちコラム

公正証書遺言の証人 は誰に頼む?

遺言書にはいくつか種類がありますが、自筆証書遺言と比べて作成に費用や手間がかかるにも関わらず、「公正証書遺言」が多くの方に選ばれています。その理由は、公証人が関与することで遺言内容の法的な不備を防ぎ、無効になるリスクを大幅に減らせるためです。また、原本が公証役場に保管されるため、紛失や改ざんの心配がなく、遺言者の意思がより確実に実現されます。

しかし、この公正証書遺言を作成する際には、必ず2名の「証人」が必要となります。この証人選びが、遺言作成における一つの重要なポイントです。

今回は、公正証書遺言の証人について、その役割、誰がなれるのか(なれないのか)、探し方、そして当日の流れまで、遺言作成サポートの専門家である行政書士が分かりやすく解説します。先日、実際に証人を務めた際の経験も踏まえてお伝えします。

1.公正証書遺言の「証人」とは?その役割

公正証書遺言における証人には、主に以下の役割があります。

  • 遺言者が本人であること、正常な判断能力のもとで遺言していることを確認する。
  • 遺言者が遺言の内容を理解し、承認していることを確認する。
  • 公証人が作成した遺言の内容が、遺言者の真意と一致していることを確認する。
  • 遺言作成の場に立ち会い、公正証書に署名・押印する。

証人は、遺言が適正な手続きで作成されたことを証明する重要な役割を担っています。

2.証人になれない人(欠格者)とは?

誰でも証人になれるわけではありません。法律(民法第974条)で、以下の人は証人になれないと定められています(証人欠格者)。

  • 未成年者
  • 推定相続人(遺言者が亡くなった場合に相続人となる予定の人)
  • 受遺者(遺言によって財産を受け取る人)
  • 推定相続人および受遺者の配偶者、直系血族(父母、祖父母、子、孫など)
  • 公証人の配偶者、四親等内の親族、書記、使用人

ご家族や親しい間柄の方に依頼しようとしても、上記に該当してしまうケースが多く、注意が必要です。「誰が相続人になるか」「誰に財産を渡すか」を考えると、身内から証人を選ぶのは難しい場合が多いのが実情です。

3.では、誰に証人を頼めばよいのか?

証人欠格者に該当しない成人であれば、友人や知人に依頼することも可能です。しかし、遺言の内容は非常にプライベートな情報であり、その内容を知られてしまうことに抵抗を感じる方もいらっしゃるでしょう。また、守秘義務がない方に依頼する場合、情報が外部に漏れる可能性もゼロではありません。

信頼できる証人が見つからない場合は、以下の方法があります。

  • 公証役場に相談する: 有料になりますが、公証役場で証人を紹介してもらうことが可能です。
  • 専門家に依頼する: 行政書士や弁護士など、守秘義務を持つ国家資格者(専門家)に依頼する方法です。専門家は職務上、遺言の内容や依頼者の情報を外部に漏らすことはありません。安心して任せることができます。

4.【体験談】公正証書遺言作成当日の流れと証人の動き

先日、私が証人を務めた際の、公証役場での遺言作成当日の様子をお伝えします。

  1. 集合・入室: まず、私ともう一人の証人が指定された時間に公証役場へ行き、面談室(応接室のような部屋)へ通されました。
  2. 遺言者の入室: ほどなくして遺言者の方が入室されました。(ご家族が付き添いで来られることもありますが、原則として作成の場には同席できません。室外でお待ちいただくことになります。)
  3. 遺言内容の確認:
    • まず、遺言者から公証人へ、改めて遺言の趣旨(どのような内容の遺言をしたいか)を口頭で伝えます。(これを「口授(くじゅ)」と言います)
    • 公証人は、事前に遺言者と打ち合わせをして作成しておいた遺言書の原稿を、遺言者と証人に読み聞かせ、内容に間違いがないかを確認します。
    • 公証人の先生は、遺言者が緊張しないよう、非常に丁寧で優しい口調で確認を進めていらっしゃいました。
  4. 署名・押印: 遺言の内容に間違いがないことを確認したら、遺言者、そして私たち証人2名が、それぞれ公正証書に署名・押印します。(遺言者は通常、実印と印鑑証明書が必要です。証人は認印で可能です。)
  5. 公証人の署名・押印: 最後に、公証人が署名・押印をして、公正証書遺言が完成します。
  6. 書類の交付: 完成した公正証書遺言の原本は、公証役場で厳重に保管されます。遺言者には、原本と同じ効力を持つ「正本」と、写しである「謄本」が交付されます。

証人は、この一連の流れに立ち会い、遺言者が確かに本人の意思で遺言内容を決定し、その内容を確認したこと、そしてその手続きが適正に行われたことを見届ける役割を果たしました。

5.まとめ:信頼できる証人選びが重要

公正証書遺言は、ご自身の最後の意思を確実に実現するための有効な手段です。そして、その作成には信頼できる証人の存在が不可欠です。

証人選びでお困りの場合や、そもそも遺言書の作成自体をどう進めればよいか分からない場合など、遺言に関するお悩みは、ぜひ専門家である行政書士にご相談ください。

当事務所では、遺言書の文案作成サポートから、必要書類の収集、公証役場との打ち合わせ調整、そして当日の証人の手配・立会いまで、トータルでサポートいたします。初回のご相談は無料ですので、お気軽にお問い合わせください。

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