お役立ちコラム
5.142025
遺言書 を書いたほうがいい人7選

「自分にはまだ早い」「財産なんてほとんどないから関係ない」 遺言書 と聞くと、そう思われる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、遺言書は、ご自身の最後の意思を明確に示し、残される大切なご家族や関係者が相続をめぐって争う「争続」を未然に防ぐための非常に有効な手段です。
この記事では、相続の専門家である行政書士の視点から、特に遺言書を作成しておくことを強くおすすめする7つのケースをご紹介します。ご自身やご家族の状況と照らし合わせながら、読み進めてみてください。
遺言書がないとどうなる?起こりうる相続トラブル
遺言書がない場合、民法で定められた相続人(法定相続人)が、法定された割合(法定相続分)で財産を分けることになります。一見公平に見えるこの制度ですが、実際には以下のようなトラブルが起こりがちです。
- 相続人間の話し合い(遺産分割協議)がまとまらない:誰がどの財産を相続するのか、意見が対立し、協議が長期化したり、家庭裁判所の調停や審判に発展したりすることがあります。
- 特定の相続人に多くの負担がかかる:例えば、長年親の介護をしてきた相続人がいても、法定相続分通りにしか財産を受け取れず、不公平感が生じることがあります。
- 相続手続きが煩雑になる:戸籍謄本の収集や遺産分割協議書の作成など、相続人全員の協力が必要となり、時間と手間がかかります。
- 思いがけない人が相続人になる:例えば、長年連絡を取っていなかった兄弟姉妹や甥姪が相続人となり、遺産分割協議に参加してくるケースもあります。
これらのトラブルは、残されたご家族に精神的・経済的な大きな負担を強いることになりかねません。
【専門家が解説】遺言書を書いたほうがいい7つのケース
では、具体的にどのような方が遺言書を作成したほうがよいのでしょうか。代表的な7つのケースを見ていきましょう。
1. お子様がいないご夫婦
お子様がいないご夫婦の場合、夫が亡くなると、妻だけでなく、夫の親(または祖父母)も相続人になります。もし親や祖父母も亡くなっている場合は、夫の兄弟姉妹(または甥姪)が相続人となります。 遺言書で「全財産を妻に相続させる」と記しておけば、妻は他の相続人と遺産分割協議をすることなく、スムーズに財産を相続できます。長年連れ添った配偶者に全ての財産を残したいと考えるなら、遺言書は必須です。
2. 再婚されていて、前配偶者との間にもお子様がいる方
再婚されている方の場合、現在の配偶者、現在の子、そして前配偶者との間の子も相続人となります。遺産分割協議が複雑になりやすく、感情的な対立も起こりやすいケースです。 誰にどの財産をどのくらい残したいのか、遺言書で明確に意思表示しておくことで、無用な争いを避けることができます。
3. 相続人同士の仲が良くない、または疎遠な方
残念ながら、相続人同士の関係が良好でない場合、遺産分割協議は紛糾しがちです。また、長年疎遠だった相続人がいる場合も、意思疎通が難しく、協議が難航することが予想されます。 遺言書で財産の分け方を具体的に指定しておくことで、相続人間の直接のやり取りを最小限に抑え、トラブルの発生リスクを軽減できます。
4. 内縁関係のパートナーがいる方(事実婚のご夫婦)
法律上の婚姻関係にない内縁の妻や夫は、法定相続人にはなれません。つまり、遺言書がなければ、どれだけ長く一緒に暮らし、生活を支え合っていても、財産を相続する権利は一切ないのです。 内縁のパートナーに財産を残したいと考える場合は、必ず遺言書を作成し、「遺贈する」旨を記載する必要があります。
5. 特定の相続人に財産を多く残したい、または相続させたくない方がいる場合
「事業を継いでくれる長男に多くの財産を残したい」「長年介護をしてくれた娘に報いたい」といった特定の希望がある場合や、逆に「この相続人には財産を渡したくない」という意思がある場合も、遺言書が有効です。 ただし、遺留分(一定の相続人が最低限相続できる権利)には配慮が必要です。遺留分を侵害する内容の遺言も有効ですが、後々トラブルになる可能性もあるため、専門家と相談しながら作成することをおすすめします。
6. 個人事業主や会社経営者の方
事業用の資産や自社株は、誰が相続するかによって事業の継続に大きな影響が出ます。後継者を指定し、事業が円滑に承継されるようにするためには、遺言書による対策が不可欠です。 遺言書がないと、事業用資産が相続人間で細かく分割されたり、経営に関心のない相続人が株式を相続したりして、事業継続が困難になる恐れがあります。
7. 相続財産に不動産が多く含まれる方
預貯金と異なり、不動産は物理的に分割することが難しく、評価額をめぐっても意見が対立しやすい財産です。相続人の中にその不動産に住み続けたい人がいる場合などは特に、誰が相続するのかを遺言書で明確にしておくことが望ましいでしょう。 売却して金銭で分ける(換価分割)のか、特定の相続人が取得して他の相続人には代償金を支払う(代償分割)のかなど、具体的な分割方法を指定することも可能です。
遺言書の種類と作成のポイント
遺言書には主に以下の種類があります。
- 自筆証書遺言:ご自身で全文、日付、氏名を手書きし、押印する方式。手軽に作成できますが、形式の不備で無効になったり、紛失や改ざんのリスクがあったりします。法務局での保管制度を利用することで、これらのリスクを軽減できます。
- 公正証書遺言:公証役場で公証人に作成してもらう方式。費用はかかりますが、形式不備で無効になる心配がなく、原本が公証役場に保管されるため最も確実な方法と言えます。
- 秘密証書遺言:内容は秘密にしたまま、遺言書の存在だけを公証人に証明してもらう方式。あまり利用されていません。
どの方式を選ぶべきか、内容をどうするかなど、迷われる場合は専門家である行政書士にご相談ください。ご自身の状況や希望に最適なアドバイスをいたします。
まとめ:円満な相続と想いを伝えるために、遺言書の準備を
遺言書は、単に財産を分けるためだけのものではありません。残される大切な方々への最後のメッセージであり、感謝の気持ちや想いを伝えるためのものでもあります。そして何より、無用な相続トラブルを防ぎ、ご家族が円満に相続手続きを進めるための「道しるべ」となるのです。
「自分にはまだ早い」と思わず、元気なうちにこそ、遺言書の作成を検討してみてはいかがでしょうか。何から始めればよいかわからない、誰に相談すればよいか迷っているという方は、ぜひ一度、相続の専門家である行政書士にご相談ください。お客様のお気持ちに寄り添い、最適な遺言書作成のお手伝いをさせていただきます。
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