お役立ちコラム

診療所の管理者が交代するときの手続き

「院長が退職するので、別の医師に交代してもらいたい」

医療法人が運営する診療所や歯科診療所では、このような場面があります。診療を続けながらの交代であっても、院内で後任を決めるだけでは手続きは終わりません。

診療所の管理者変更について、保健所と地方厚生局への届出を確認する必要があります。医療法人の場合は、新旧管理者の理事としての地位にも注意が必要です。

さらに、2026年4月からは、新たに保険医療機関の管理者となる人について、保険診療の経験等に関する要件の確認が必要になりました。

この記事では、医療法人が開設する診療所を中心に、管理者交代時の手続きと注意点を解説します。

まず「管理者の交代」と「開設者の変更」を分けて考える

診療所の手続きを考える際は、「管理者」と「開設者」を区別することが大切です。

開設者は、診療所を開設する個人または法人です。医療法人が開設した診療所であれば、開設者は医療法人です。

管理者は、その診療所の管理を担う医師または歯科医師です。医療法人が同じ診療所を引き続き開設し、管理者だけが交代する場合は、通常、診療所の変更手続きとして進めます。

一方、診療所の開設者そのものが変わる場合は、管理者変更届だけでは済みません。従前の診療所の廃止と、新たな開設者による診療所開設などの手続きが必要になります。

例えば、個人の医師が自ら開設・管理する診療所を、別の医師が引き継ぐ場合です。見た目には同じ場所で診療が続いていても、単なる「院長交代」として扱えないことがあります。

医療法人が開設する診療所では、保健所への変更届を確認する

医療法人が開設する診療所で管理者が交代した場合は、開設地を管轄する保健所等へ、診療所の開設許可事項に関する変更届を提出します。

東京都の保健所では、管理者の変更について、変更後10日以内の届出を案内しています。後任の医師・歯科医師について、免許証や臨床研修修了登録証等の確認が行われるため、提出方法を含めて管轄保健所に事前に確認しましょう。

前任者の退職日と後任者の就任日がずれると、管理者が不在となるおそれがあります。退職の予定が決まった段階で、後任者の資格や勤務体制、交代日を整理しておくことが重要です。

保険医療機関の管理者変更は、厚生局にも届け出る

保険診療を行っている診療所では、保健所への届出とは別に、地方厚生局へも管理者の変更を届け出ます。

関東信越厚生局では、「保険医療機関・保険薬局・生活保護法指定医療機関届出事項変更(異動)届」を使用し、変更前後の管理者と変更日を届け出るよう案内しています。

後任の管理者が、その保険医療機関の勤務者としてまだ届け出られていない場合は、勤務者についても確認が必要です。また、前任者が退職する場合は、退職者としての記載も確認します。

保健所への届出を出しただけでは、厚生局への変更届は完了しません。 二つの窓口で扱う情報が一致するようにしましょう。

2026年4月からの「保険医療機関の管理者要件」に注意

2026年4月1日から、新たに保険医療機関の管理者となる医師・歯科医師には、健康保険法上の要件が設けられました。

後任者については、保険医であることに加え、所定の診療経験等の要件を満たすか確認する必要があります。経験の数え方は、臨床研修を終えた時期や勤務状況などによって異なり、別の要件や例外的な取扱いも定められています。

厚生局へ管理者変更を届け出る際には、要件を満たす旨の確認と、所定の添付書類が必要です。

なお、制度施行時にすでに管理者だった人に関する経過措置を、新たに就任する後任者にもそのまま適用できるわけではありません。 後任者を決める前に、厚生労働省の案内と管轄厚生局の最新様式を確認しましょう。

医療法人では、管理者の交代に伴う理事の変更も確認する

医療法人は、原則として、開設する診療所の管理者を理事に加える必要があります。

そのため、後任の管理者がまだ理事でない場合は、理事への選任手続きが必要になるか確認します。同時に、医療法人の定款に定める理事の人数と、現在の役員構成も確認しましょう。

前任の管理者についても注意が必要です。管理者であることによって理事となっていた人は、管理者の職を退くと理事の職も失います。 管理者を退いた後も理事として留まるのであれば、改めて選任するための手続きが必要になります。

理事の就任・退任が生じる場合には、診療所の管理者変更届とは別に、医療法人の所管庁への役員変更届を確認します。理事長も交代する場合は、法人登記を含め、さらに手続きが増えます。

「診療所の院長が替わるだけ」と考えず、診療所・保険医療機関・医療法人の三つの立場から確認することが大切です。

個人開設の診療所では、廃止・新規開設となる場合がある

ここまで説明したのは、主に医療法人が開設者のまま、診療所の管理者を交代する場合です。

個人の医師・歯科医師が自ら開設・管理している診療所では、別の医師・歯科医師が引き継ぐと、管理者だけでなく開設者も変更になります。

東京都の保健所は、このような開設者(管理者)の変更について、従前の診療所の廃止と新たな診療所の開設が必要と案内しています。保険診療を継続するための厚生局の手続きも、管理者変更届だけで判断してはいけません。

個人診療所の承継や医療法人化を伴う場合は、診療を途切れさせないため、交代日を決める前に保健所と厚生局の双方へ相談しましょう。

交代日を決める前に確認したいこと

管理者の交代が決まったら、少なくとも次の点を整理しておくと手続きが進めやすくなります。

  • 診療所の開設者は、医療法人か個人か
  • 前任者の退職日と後任者の就任日はいつか
  • 後任者は管理者として必要な資格・勤務体制を満たすか
  • 保険医療機関の管理者要件を満たすか
  • 後任者の理事就任と、前任者の理事退任・再任が必要か
  • 理事長の変更も伴うか
  • 管轄保健所と厚生局に提出する書類は何か
  • 管理者の交代により、届け出ている施設基準等の要件に影響しないか

特に、後任者の勤務経験や理事としての地位は、届出書を作る段階ではなく、後任者の選定段階で確認することが重要です。

まとめ

医療法人が開設する診療所で管理者が交代するときは、保健所と地方厚生局への変更届を確認します。管理者が医療法人の理事でもある場合は、理事の就任・退任や役員変更届も整理しなければなりません。

また、2026年4月から、新たに就任する保険医療機関の管理者には要件確認と添付書類が必要になっています。後任者が決まってから要件を調べるのではなく、交代を検討する段階で確認しましょう。

行政書士なかじま法務事務所では、診療所の管理者変更に伴う手続きを整理し、保健所への届出、医療法人の役員変更届などをサポートしています。厚生局への手続きや、別途確認が必要な事項も含め、現在の状況を伺ったうえで必要な手続きをご案内します。

「院長の退職が決まったが、何から始めればよいかわからない」

「後任の医師を管理者にできるか確認したい」

という場合は、交代日を確定する前にご相談ください。

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参考資料

※必要書類や提出方法は、診療所の所在地、開設者の形態、後任者の経歴等によって異なります。実際の交代に際しては、管轄保健所・厚生局・医療法人の所管庁の最新の案内をご確認ください。

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