お役立ちコラム
8.172025
相続トラブルを回避するには?今からできる3つの備え

「うちの家族は仲が良いから大丈夫」「財産なんて、もめるほどないから関係ない」
相続について、このようにお考えではないでしょうか?しかし、残念ながら相続をきっかけに、それまで良好だった家族関係に深い亀裂が入ってしまうケースは決して少なくありません。最高裁判所が公表している司法統計によれば、遺産分割をめぐる調停や審判の申立ては毎年1万件を超えており、誰にでも起こりうる身近な問題なのです。
相続が「争族」になってしまう最大の原因は、「事前の準備不足」にあります。 大切な家族が、あなたの残した財産をめぐって争うことのないように、そして、残された家族が円滑に手続きを進められるように、元気なうちから備えておくことが何よりも重要です。
こんにちは、行政書士なかじま法務事務所の代表、中島英貴です。これまで多くの相続に関するご相談をお受けしてきましたが、「もっと早く相談に来ていれば…」と感じる場面に何度も遭遇してきました。
この記事では、相続の専門家である行政書士の視点から、将来の相続トラブルを未然に防ぐために「今からできる3つの備え」について、具体的かつ分かりやすく解説していきます。少しでも相続に不安を感じている方は、ぜひ最後までお読みいただき、円満な相続への第一歩を踏み出してください。
備え1:想いを形にする「遺言書」の作成
相続トラブル回避の最も有効な手段、それは「遺言書」です。 遺言書がない場合、民法で定められた「法定相続分」に従って遺産を分けることになりますが、これが必ずしも円満な解決につながるとは限りません。
例えば、 「長年、親の介護を一身に担ってきた長女に、少しでも多く財産を残したい」 「事業を継いでくれる長男に、会社の株式をすべて相続させたい」 「お世話になった内縁の妻に、財産を譲りたい」
このような故人の特別な想いは、法定相続では反映されません。遺言書は、ご自身の意思を法的に実現させ、相続人間の無用な争いを防ぐための、いわば「未来の家族へ向けた最後の手紙」なのです。
なぜ遺言書が重要なのか?
- 遺産の分割方法を自分で決められる: 法定相続分とは異なる割合で財産を分けたり、特定の相続人に特定の財産(自宅不動産など)を相続させたりすることができます。
- 相続手続きがスムーズになる: 遺言書があれば、相続人全員の合意(遺産分割協議)がなくても、不動産の名義変更や預貯金の解約手続きを進められます。特に、相続人が多かったり、遠方に住んでいたりする場合、このメリットは計り知れません。
- 相続人以外の人にも財産を渡せる: 内縁の妻や夫、お世話になった友人、NPO法人など、法定相続人ではない人や団体に財産を遺贈することも可能です。
知っておきたい遺言書の種類と選び方
遺言書にはいくつかの種類がありますが、ここでは代表的な「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」について解説します。
種類 | 特徴 | メリット | デメリット |
自筆証書遺言 | 全文、日付、氏名を自筆で書き、押印して作成する遺言書。 | ・費用がかからない
・いつでも手軽に作成できる ・内容を誰にも知られずに済む |
・形式不備で無効になるリスクがある
・紛失、改ざん、隠匿の恐れがある ・相続開始後、家庭裁判所の「検認」手続きが必要 |
公正証書遺言 | 公証役場で、証人2人以上の立会いのもと、公証人に作成してもらう遺言書。 | ・形式不備で無効になる心配がない
・原本が公証役場で保管され、安全・確実 ・家庭裁判所の「検認」が不要・相続手続きが最もスムーズ |
・作成に費用と手間がかかる・証人が必要になる |
【専門家からの一言】 手軽さから自筆証書遺言を選ばれる方も多いですが、私たちは「公正証書遺言」を強くお勧めします。費用はかかりますが、その確実性と安全性は、将来のトラブルを回避するための「保険」とお考えください。形式の不備で遺言自体が無効になってしまっては、元も子もありません。 また、2020年からは法務局で自筆証書遺言を保管してくれる制度も始まりました。これにより紛失や改ざんのリスクは減りましたが、内容の有効性まで保証してくれるわけではない点に注意が必要です。
遺言書の作成は、単に財産の分け方を書くだけではありません。なぜそのように分けたのか、家族への感謝の気持ちなどを記す「付言事項」も非常に重要です。法的な効力はありませんが、あなたの真意が伝わることで、相続人が納得し、円満な解決につながるケースが多くあります。
備え2:財産の見える化「財産目録」の作成
相続トラブルのもう一つの大きな原因は、「財産の全体像が不明確」であることです。 残された家族が、故人の財産をゼロから調査するのは大変な労力を伴います。通帳や証券会社の書類、不動産の権利証などを家中探し回るうちに、心身ともに疲弊してしまうのです。
また、財産がどこにどれだけあるか分からない状態では、遺産分割の話し合いを始めることすらできません。この調査の過程で、知らされていなかった借金や、特定の子供への生前贈与が発覚し、話がこじれることも少なくありません。
そこで重要になるのが、ご自身が元気なうちに「財産目録」を作成しておくことです。
財産目録で何を把握すべきか?
財産目録に決まった形式はありませんが、以下の項目を網羅しておくと良いでしょう。
- プラスの財産
- 預貯金: 銀行名、支店名、口座種別、口座番号
- 不動産: 土地・建物の所在地、地番、家屋番号(登記事項証明書や固定資産税納税通知書で確認)
- 有価証券: 証券会社名、支店名、口座番号、株式の銘柄・株数、投資信託の銘柄・口数
- 生命保険: 保険会社名、証券番号、受取人、死亡保険金額
- その他: 自動車、ゴルフ会員権、骨董品、貸付金など
- マイナスの財産
- 借入金: 借入先、現在の残高(住宅ローン、自動車ローン、カードローンなど)
- その他: 未払いの税金、保証債務など
- デジタル資産
- ネット銀行やネット証券のID・パスワード
- 有料サービスのサブスクリプション情報
- SNSアカウントの取扱い など
【専門家からの一言】 財産目録は、一度作って終わりではありません。年に一度、ご自身の誕生日や年末など、時期を決めて見直し、最新の状態に更新していくことが大切です。 この目録があるだけで、残された家族の負担は劇的に軽減されます。また、ご自身の資産状況を客観的に把握することで、今後の生活設計や、後述する生前贈与などの相続税対策を検討するきっかけにもなります。私たち行政書士は、財産目録の作成サポートや、その後の相続対策のご提案も行っております。
備え3:想いを伝える「家族とのコミュニケーション」
遺言書を作成し、財産目録を準備しても、それだけでは十分でない場合があります。法的な準備と同じくらい、あるいはそれ以上に重要なのが、「家族とのコミュニケーション」です。
親が「良かれ」と思って決めた遺産の分け方が、子供たちの意向と異なっていたり、子供たちの間で不公平感を生んでしまったりすることがあります。 例えば、親としては「実家は長男に継いでほしい」と考えていても、長男自身は実家に戻るつもりがなく、売却して現金で分けたいと思っているかもしれません。
こうした認識のズレが、後々のトラブルの火種となります。大切なのは、ご自身が元気なうちに、家族みんなで相続について話し合う機会、いわゆる「家族会議」を持つことです。
なぜ家族との対話が重要なのか?
- 親の想いを直接伝えられる: なぜこのような財産の分け方を考えているのか、その背景にある想いや願いを直接伝えることで、子供たちの理解を得やすくなります。
- 子供たちの意向を確認できる: 子供たちが財産をどうしたいと考えているのか、それぞれのライフプランや希望を聞くことができます。
- 誤解や憶測を防げる: 「親は兄ばかりを贔屓していた」「姉は昔から要領が良かった」といった、相続とは直接関係のない過去の感情が噴出し、話がこじれることがあります。事前にオープンに話し合うことで、こうした感情的な対立を避けられます。
家族会議を成功させるポイント
- タイミング: 親が元気で、判断能力がしっかりしているうちに行いましょう。誰かの誕生日や、家族が集まるお正月やお盆などを利用するのも良いでしょう。
- 参加者: 原則として、相続人となる可能性のある全員が参加することが望ましいです。
- 進め方:
- まずは親から、なぜこの話をするのか(家族に争ってほしくないという想い)を真摯に伝えます。
- 作成した財産目録をもとに、財産の全体像を共有します。
- 遺言書を作成する予定がある場合は、その内容や考えを説明します。
- 子供たち一人ひとりの意見や希望に、真摯に耳を傾けます。
【専門家からの一言】 お金の話は、家族間であっても切り出しにくいものです。また、介護への貢献度や、特定の子供への生前贈与(学費や住宅資金など)といった、特にデリケートな話題に触れなければならない場面もあります。 当事者だけでは感情的になってしまい、話し合いが難しい場合は、私たち行政書士のような第三者の専門家が間に入ることも有効です。客観的な立場で、法的な情報を提供しながら、冷静な話し合いの場を設定するお手伝いをさせていただきます。
まとめ:円満な相続は「元気なうちの備え」から
今回は、相続トラブルを回避するために、今からできる3つの備えについて解説しました。
- 遺言書の作成: あなたの想いを法的に実現させ、無用な争いを防ぐ最も確実な方法です。
- 財産目録の作成: 財産を「見える化」し、残された家族の負担を大きく減らします。
- 家族とのコミュニケーション: 事前に想いを共有し、家族間の認識のズレをなくします。
これら3つは、どれか一つだけやれば良いというものではなく、互いに連携させることで、その効果を最大限に発揮します。
相続対策は、「まだ早い」ということは決してありません。むしろ、ご自身が元気で、冷静な判断ができる「今」だからこそ、始めるべきなのです。先延ばしにすればするほど、認知症などで意思表示ができなくなるリスクも高まります。
「何から手をつけていいか分からない」「自分の場合はどうすれば最適なのか知りたい」 そうお感じになったら、ぜひ一度、相続の専門家である行政書士にご相談ください。私たちは、法律の専門家として、あなたとあなたの大切なご家族に寄り添い、法的に有効な遺言書の作成から、相続手続き、そして家族会議のサポートまで、円満な相続を実現するためのお手伝いをさせていただきます。
初回のご相談は無料で承っております。どうぞお気軽にお問い合わせください。 あなたのその一歩が、大切な家族の未来の笑顔を守ることにつながります。
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