お役立ちコラム
9.102024
「 おひとりさま 」のための死後事務委任

「自分が亡くなった後の手続き、誰に頼めばいいんだろう…」
「家族や親戚に迷惑はかけたくない…」
「ペットの将来が心配…」
おひとりさま(単身の方、身寄りのない方など)にとって、ご自身の死後の手続きは切実な悩みではないでしょうか。頼れる方がいない場合、葬儀や遺品整理、役所への届け出など、様々な手続きが滞ってしまう可能性があります。
そんな不安を解消する有効な手段が「死後事務委任契約」です。
この記事では、終活や相続を専門とする行政書士が、おひとりさまにとってなぜ死後事務委任が必要なのか、遺言書との違い、具体的な内容、費用、誰に頼むべきかまで、分かりやすく解説します。
この記事を読めば、死後事務委任についての理解が深まり、ご自身の状況に合わせた最適な「終活」の準備を進めることができます。
1. 死後事務委任契約とは? – あなたの死後の手続きを信頼できる人に託す契約
「死後事務委任契約」とは、ご自身が亡くなった後に行う必要がある様々な事務手続き(死後事務)を、生前に信頼できる第三者(個人または法人)に依頼しておく契約のことです。
特に、頼れるご家族やご親族がいない、あるいは遠方にいるなどの理由で、死後の手続きを任せられる人がいない「おひとりさま」にとって、非常に重要な備えとなります。
<死後事務委任で依頼できることの例>
- 役所への届け出: 死亡届、健康保険証の返却、年金関係の手続きなど
- 葬儀・火葬・納骨: ご自身の希望に沿った葬儀の執行、お墓への納骨や散骨の手配
- 遺品整理・住居の片付け: 自宅や入居施設の整理、家財道具の処分、賃貸契約の解約
- 医療費・施設利用料の支払い: 未払いの入院費や介護施設費などの精算
- 各種契約の解約: 電話、インターネット、公共料金、サブスクリプションサービスなどの解約
- ペットの世話: 新しい飼い主探しや、信頼できる人・施設への引き渡し
- デジタル遺品の整理: パソコンやスマートフォンのデータ整理、SNSアカウントの削除など
- 関係者への連絡: 親しい友人や知人への訃報連絡
これらの手続きを、あなたの意思に沿って、確実に実行してもらうために結ぶのが死後事務委任契約です。
2. 遺言書だけでは不十分? 死後事務委任との違い
「遺言書があれば大丈夫なのでは?」と思われるかもしれません。しかし、遺言書と死後事務委任契約では、その役割とカバーできる範囲が異なります。
項目 | 遺言書 | 死後事務委任契約 |
主な目的 | 財産の分配方法を指定する | 死後の事務手続きを委任する |
法的根拠 | 民法 | 民法(委任契約) |
主な内容 | 遺産分割、相続人の指定、遺贈など | 葬儀、納骨、遺品整理、各種解約手続きなど |
効力発生時期 | 死亡時 | 死亡時 |
できること | 財産に関すること | 財産管理以外の幅広い事務手続き |
できないこと | 葬儀の手配、遺品整理などの具体的な事務執行 | 遺産分割の指定(原則として遺言書で行う) |
遺言書は、主に「誰にどの財産を相続させるか」といった財産分与について定めるものです。一方、死後事務委任契約は、葬儀の手配や遺品整理、役所の手続きといった死後の事務手続き全般を依頼するためのものです。
おひとりさまの場合、財産だけでなく、死後の様々な手続きを誰かに確実に実行してもらう必要があります。そのため、遺言書と死後事務委任契約の両方を準備しておくことが、より安心して終活を進めるための鍵となります。
3. 「おひとりさま」が抱える死後の不安と死後事務委任による解決策
おひとりさまが抱えやすい死後の不安には、以下のようなものがあります。死後事務委任契約は、これらの不安に対する具体的な解決策となります。
- 「遺品整理や部屋の片付けはどうすればいいの?」
- → 死後事務委任契約で、信頼できる人に遺品整理の方法(形見分け、処分方法など)を具体的に指示し、実行を依頼できます。
- 「大切なペットの世話はどうなるの?」
- → 新しい飼い主を探してもらう、特定の知人や施設に託す、必要な費用を準備しておくなど、ペットの将来について具体的に依頼できます。
- 「銀行口座の解約や保険の手続きがわからない」
- → 預貯金の解約や保険金の請求手続きなどを、死後事務として依頼できます。(ただし、相続財産の管理・処分は遺言執行者の役割となる場合があります)
- 「借金や未払いの支払い(家賃など)はどうなるの?」
- → 相続財産からの清算手続きを依頼できます。(相続放棄など、法的な手続きが必要な場合は、弁護士や司法書士との連携が必要になることもあります)
- 「葬儀やお墓はどうすればいいの?誰に頼めばいいの?」
- → 希望する葬儀の形式(家族葬、直葬など)、納骨方法(お墓、散骨、永代供養など)を具体的に指定し、その手配と実行を依頼できます。
- 「誰にも迷惑をかけずに、静かに旅立ちたい」
- → 死後事務委任契約を結んでおくことで、ご自身の希望通りに手続きが進められ、周囲への負担を最小限に抑えることができます。
4. 誰に頼む? 死後事務の受任者(依頼相手)の選び方
死後事務委任の受任者(依頼する相手)は、信頼できる人であれば誰でもなれますが、主に以下の選択肢があります。
- 親族・友人・知人:
- メリット: 費用を抑えられる場合がある、気心が知れている。
- デメリット: 法的な知識や手続きの経験が少ない場合がある、高齢だと負担が大きい、先に亡くなる可能性がある、他の相続人との間でトラブルになる可能性も。
- 法人(NPO法人、一般社団法人など):
- メリット: 組織として対応するため継続性が期待できる、専門知識を持つ場合がある。
- デメリット: サービス内容や費用が団体によって様々、倒産リスクもゼロではない。
- 専門家(行政書士、弁護士、司法書士など):
- メリット: 法律や手続きに関する専門知識が豊富、中立的な立場で確実に業務を遂行してくれる、守秘義務があり安心、他の専門家との連携もスムーズ。
- デメリット: 報酬(費用)が発生する。
行政書士に依頼するメリット:
- 契約書作成の専門家: 法的に有効で、ご自身の希望を正確に反映した契約書を作成します。
- 相続・終活に精通: 遺言書作成や相続手続きなど、関連する分野にも精通しており、トータルでサポートできます。
- 中立性と客観性: 公正な立場で、確実に事務を遂行します。
- トラブル防止: 将来起こりうる問題を予測し、契約内容に反映させることで、トラブルを未然に防ぎます。
おひとりさまの場合、負担や専門性を考慮すると、行政書士などの専門家に依頼するのが最も確実で安心できる選択肢の一つと言えるでしょう。
5. 死後事務委任契約書の作成ポイントと注意点
死後事務委任契約は、口約束ではなく、必ず書面(契約書)で作成しましょう。後のトラブルを防ぎ、確実に実行してもらうために重要です。
<契約書に盛り込むべき主な項目>
- 委任者と受任者の情報: 氏名、住所など
- 委任する事務の内容: 依頼したいことを具体的かつ明確に記載します。(例:「死亡届の提出」「〇〇銀行の預金解約」「自宅の遺品整理と処分」「ペット〇〇の新しい飼い主探し」など)
- 受任者の権限: 委任事務を行うために必要な権限を明記します。
- 報告義務: 受任者が委任者(生前)や相続人などに業務の進捗や結果を報告する義務を定めます。
- 報酬: 受任者への報酬額、支払い方法、支払い時期を明確に定めます。(無報酬の場合もその旨を記載)
- 費用負担: 死後事務を行うために必要な実費(葬儀費用、遺品整理費用、交通費など)を誰がどのように負担するかを定めます。多くの場合、委任者が事前に費用を預けておく「預託金」の形で準備します。
- 契約の効力発生時期: 委任者の死亡時に効力が発生することを明記します。
- 契約の終了事由: どのような場合に契約が終了するかを定めます。
- 秘密保持義務: 受任者が業務上知り得た秘密を守る義務を定めます。
公正証書での作成がおすすめ:
必須ではありませんが、契約書の「公正証書」化をおすすめします。公証人が内容を確認し、作成するため、証明力が高く、紛失や改ざんのリスクも低くなります。より確実に契約内容を実行したい場合に有効です。
注意点:
- 受任者の同意: 必ず事前に受任者候補に内容を説明し、十分な理解と同意を得ておく必要があります。
- 費用: 契約書作成費用、受任者への報酬、預託金など、必要な費用について事前にしっかり確認しましょう。
- 定期的な見直し: 状況や気持ちの変化に合わせて、契約内容を見直すことも検討しましょう。
6. 死後事務委任にかかる費用 – 目安と内訳
死後事務委任契約にかかる費用は、主に以下の3つに分けられます。
- 契約書作成費用:
- 行政書士などの専門家に作成を依頼する場合の報酬です。
- 相場: 事務所や内容によりますが、一般的に5万円~15万円程度が目安です。
- 公正証書にする場合は、別途公証人手数料(数万円程度)がかかります。
- 受任者への報酬:
- 死後事務を行ってもらう対価として支払う報酬です。
- 報酬体系は様々で、月額、一括払い、または事務内容に応じた個別設定などがあります。契約時に明確に定めておく必要があります。
- 親族や友人に依頼する場合は無報酬のこともありますが、負担を考慮し、謝礼程度は用意するのが望ましいでしょう。
- 専門家や法人に依頼する場合、報酬規定を確認しましょう。
- 死後事務執行のための預託金:
- 葬儀費用、遺品整理費用、未払い金の精算など、実際に死後事務を行うために必要となる実費です。
- 事前に受任者や信託銀行などに預けておくことが一般的です。
- 金額は依頼する事務の内容によって大きく異なりますが、数十万円~数百万円程度が目安となります。葬儀費用や遺品整理費用が大きな割合を占めます。
費用は依頼内容や依頼先によって変動します。複数の事務所や団体から見積もりを取り、内容を比較検討することをおすすめします。
7. 【事例紹介】こんな「おひとりさま」が死後事務委任を活用しています
- 事例1:ペットの将来を託す (Aさん・70代女性)
- 長年連れ添った愛猫の「タマ」を残して逝くのが心配だったAさん。近所の信頼できる友人Bさんに死後事務を依頼。契約書には、Bさんにタマの世話を託すこと、かかりつけの動物病院、必要な飼育費用として預託金から支弁することなどを明記しました。
- 事例2:遠方の親族に頼らず、身辺整理を依頼 (Cさん・60代男性)
- 親族はいるものの遠方に住んでおり、迷惑をかけたくないCさん。行政書士に死後事務を依頼。葬儀は質素に行い、故郷の海への散骨を希望。自宅マンションの売却手続きと遺品整理(一部は指定の知人へ送付)も委任しました。
- 事例3:デジタル遺品の整理も依頼 (Dさん・50代女性)
- インターネットでの活動が多いDさん。自身の死後、ブログやSNSアカウントの閉鎖、オンラインバンクの解約などを希望。死後事務委任契約に、PCやスマートフォンのパスワード情報を別途安全な方法で伝え、デジタル遺品の整理も依頼しました。
8. まとめ:死後事務委任で、自分らしい最期を迎える準備を
おひとりさまにとって、死後事務委任契約は、ご自身の死後の尊厳を守り、残される方への負担を減らすための、非常に有効な「終活」の手段です。
遺言書と合わせて準備することで、財産に関することだけでなく、葬儀、遺品整理、ペットのことなど、ご自身の細かな希望まで実現することが可能になります。
「まだ早い」と思わず、元気なうちにご自身のエンディングについて考え、信頼できる専門家と共に準備を始めることが、安心して「今」を生きることに繋がります。
9. 行動を起こしましょう:まずは無料相談へ
「自分には死後事務委任が必要なのか知りたい」 「誰に頼むのがベストかわからない」 「費用がどれくらいかかるか不安」 「何から始めればいいか分からない」
このような疑問や不安をお持ちでしたら、まずはお気軽に専門家にご相談ください。
行政書士なかじま法務事務所は、東京都台東区を拠点に、おひとりさまの終活支援(死後事務委任契約、遺言書作成、身元保証など)や相続手続きを専門とする行政書士事務所です。
長年の経験と豊富な実績に基づき、お一人おひとりの状況やご希望を丁寧にお伺いし、最適なプランをご提案いたします。初回のご相談は無料です。無理な勧誘は一切いたしませんので、安心してご連絡ください。
あなたの不安を解消し、心穏やかな未来を築くお手伝いをさせていただきます。
東京都台東区で「お困りごとを解決する」行政書士をしております。
遺言・相続・医療法人設立・建設業許可・会社設立などのご相談を承っております!